ニフティが語るプロ棋士達
天野貴元著「オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ」より
「では、渡辺明君と天野貴元君。対局を始めてください」
僕は初めて、その子どもが渡辺君という名前と知った。
母も渡辺君の凄みを感じたのか、心配そうな目で僕を見ている。
渡辺君の指し手は早かった。
他の子が少しはキョロキョロするところ、落ち着き払った手つきで駒組みを進める。
僕も早指しで対抗したが、渡辺陣の鉄壁の構えに歯が立たない。
みるみるうちに形勢が悪くなり、ものの数分で敗勢に追い込まれたとき、
信じられないことが起きた。
「あ、二歩!」
<中略>
「……負けました」
渡辺君が投了した。必勝の将棋をうっかりで落としてしまったにもかかわらず、
渡辺君の表情には動揺の色が見られなかった。
「ま、まだ1位だからいいか」
彼の表情からは、そんな飄々としたムードが感じられた。
オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ
天野貴元著
¥1,337
渡辺明竜王に森内俊之名人が挑戦した第26期竜王戦第2局、
ニコニコ生放送に豊川孝弘七段が解説に登場した時の動画です。
豊川七段は奨励会の幹事だったのですが、
厳しい棋士と優しい棋士のペアになるそうなので、
飯野健二七段が優しい棋士の役柄で、豊川七段が鬼軍曹役だったのでしょう。
前任が小林宏七段と中村修九段だったそうなので、こっちは小林七段が鬼軍曹役ですね。
動画では鬼軍曹役の豊川七段に、
若かりし頃の渡辺二冠が何してればいいんですか?と聞きにきたり、
宮田敦史六段がトイレの場所を聞きにきたりといったエピソードが語られていますが、
子供の頃から性格はそのままなんですね。
下記の話は天野さんが小学2年生、渡辺二冠が小学3年生だった時に、
上野松坂屋将棋こども大会で対戦した時のエピソードです。
天野貴元著「オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ」より
「では、渡辺明君と天野貴元君。対局を始めてください」
僕は初めて、その子どもが渡辺君という名前と知った。
母も渡辺君の凄みを感じたのか、心配そうな目で僕を見ている。
渡辺君の指し手は早かった。
他の子が少しはキョロキョロするところ、落ち着き払った手つきで駒組みを進める。
僕も早指しで対抗したが、渡辺陣の鉄壁の構えに歯が立たない。
みるみるうちに形勢が悪くなり、ものの数分で敗勢に追い込まれたとき、
信じられないことが起きた。
「あ、二歩!」
<中略>
「……負けました」
渡辺君が投了した。必勝の将棋をうっかりで落としてしまったにもかかわらず、
渡辺君の表情には動揺の色が見られなかった。
「ま、まだ1位だからいいか」
彼の表情からは、そんな飄々としたムードが感じられた。
この大会で渡辺二冠は優勝、天野さんは3位だったそうですが、
「どうせ優勝するの俺だし?」みたいな態度の渡辺少年が目に浮かびます。
オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ
天野貴元著
¥1,337