将棋プロジェクトのすべて① はじめに~将棋を指す脳の仕組を求めて


将棋プロジェクトのすべて② 直観的理解の手掛りと素早い脳波活動


将棋プロジェクトのすべて③ プロ棋士の直観思考の脳内メカニズム


将棋プロジェクトのすべて④ 成果活用にむけた展望


将棋プロジェクトのすべて⑤ トークセッション


理研脳科学総合研究センターで2007年から行われてきた、
将棋棋士の"直観"を解明するプロジェクトの成果を発表している動画です。
米長会長から提案された企画ということで、
ニコニコ生放送や電王戦以外にもずいぶん置き土産があるんですね。
羽生さんが勝負哲学という本でサッカーの岡田武史監督に、
脳の働きを測定したことがあると言っていますが、多分これのことでしょう。
本の中で羽生さんは、
・直感を生み出す神経回路は熟練者といえども天性のものではなく、
努力によって発達するものではないか
・選択は直感的に行われるが、
その直感は経験や訓練の厚い層をくぐり抜けてきているのではないか
と述べていますが、
動画では直感が基低核という古い構造のところから出てくると言っています。

池谷裕二著「進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線」より

ちなみに上丘というのは、処理の仕方が原始的で単純だから、判断が速くて正確なんだ。
たとえば、
野球ではピッチャーが投げたボールがバッターにまで届く時間はざっと0.5秒くらいだ。
一方で、ものや文字を見て判断するまでに0.5秒くらいかかるって説明したよね。
つまりピッチャーの投げた物体が
「白色をした硬式ボールで、時速約150キロでこちらに向かって飛んできている」
などと判断したときには、「時すでに遅し」で、
いちいちそんな判断をしていたら三振してしまう。
実際、野球のボールやテニスのサーブなどの剛速球を
どうやって打ち返しているのかとプロの選手に訊くと、
「何も考えていない。無意識だ」と答えてくる。
これは上丘で見て、判断している証拠だよね。


頭脳でも運動でも一流の選手は脳の原始的なところをいかに動かすかが鍵なんですかね。
観る将棋ファンとしては、
2番目の動画の7分過ぎから解説がありますが、
・王と飛車の位置によって戦いの概要が決まる
・角と銀が作戦の具体的なところを決める
・残りの駒は作戦に従って配置される
というのが面白い話だったと思います。
自分の王と相手の飛車、相手の王と自分の飛車が向かい合っている状態だと、
盤上全体を使った攻めあいになる、
自分の王と相手の王、自分の飛車と相手の飛車が向かい合っている状態だと、
まず攻め駒同士の戦いになり、その後王様に迫っていく、
という展開になるので、王と飛車は戦いの概要を決める重要な駒になります。
また、角や銀は具体的な作戦を決める駒で、
駒の名前のついた戦法名が多いとのことです。
角換わり、引き角、筋違い角、棒銀、早繰り銀、腰かけ銀といったものの他に、
矢倉のなかの▲3七銀戦法や横歩取りのなかの△3三角戦法、
ゴキゲン中飛車のなかの超速▲3七銀といった、
大まかな戦術のなかのひとつの作戦としても、角や銀の名前のついた戦法がありますね。
途中からタイトル戦の中継を見るときは、王、飛車、角、銀の配置を見るのが、
その時の局面を把握するこつかもしれません。

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