今日は第8回朝日杯将棋オープン戦本戦、渡辺明二冠、永瀬拓也六段、
郷田真隆九段、屋敷伸之九段の間でベスト4が争われ、
渡辺二冠が準決勝に進出しました。

ニコニコ生放送では解説が佐々木慎六段、聞き手が熊倉紫野女流初段で、
大盤解説会が放送されました。

佐々木六段「戦型予想ですか?角換わりだと思います。
角換わり解説があまり得意じゃないんですけど…」
佐々木六段は繊細ではなく豪快寄りの振り飛車党なので、今日の解説は大変そうだ。

渡辺二冠対永瀬六段の対局は予想通り角換わりに。
振り駒で上に映っている渡辺二冠が先手になったので、
盤面の映像が普段と違い上が先手になっていて、
大盤はいつも通り後手が上になっているのでのですごい違和感でした。

すごいペースで進む渡辺二冠対永瀬六段。
佐々木六段「多分記録とってる人も大変ですね。これだけ早いと。これ早送りですか?」

熊倉女流「改めて注目ポイントはありますか」
佐々木六段「まあ渡辺郷田戦になるかどうか」
両者勝ちあがればタイトル戦と同じ組み合わせになります。

盤上は角換わり同型から乱戦に。
佐々木六段「これ実践例ありますか?」
永瀬六段が桂取りを手抜いて攻め合う手を指して、
佐々木六段「あ、これ見たことある」
お互いと金を作りましたが、まだ開始10分という猛スピードです。
前例は1局で先手が勝ったらしいですが、
後手の永瀬六段がこの手順を選んでいるので、何か用意があるのかといったところ。

佐々木六段曰く、
渡辺永瀬戦は棋譜並べしたことがないから初手合いじゃないかなあとのこと。
佐々木六段「普通は個性を出したいんですけど、
終盤まで研究しているってことですかね」
そして渡辺二冠が先に新手。永瀬六段はどう指すか。

熊倉女流「次の一手アンケートいきますか?」
佐々木六段「7六桂と4一歩とその他ですか?でも多分その他が正解ですよ?」
熊倉女流「1八角成りとか」
佐々木六段「あ、飛車取るこんなに普通の手を解説してなかった」
次の一手アンケート
7六桂33.3%、4一歩5.6%、1八角成り31.3%、その他29.9%。
すぐに永瀬六段は7六桂。

そして佐々木六段が解説で先手苦しいかなと言っていた手を渡辺二冠は選択。
佐々木六段「あれ、さっき苦しいって言ったのに。僕が間違ってたんですね」
熊倉女流が馬を取らないで桂馬を取る手を示し、
佐々木六段「熊倉さん天才ですね。こんな手が…ん?」
先手が王手角取りにされる手順を並べて、
佐々木六段「あれ?だめじゃん」

アンケートどちらを持って指してみたいですか
佐々木六段「私は後手で、解説でそう言ってるので」
熊倉女流「私はそれじゃ先手で」
先手・渡辺二冠18.1%、後手・永瀬六段69.4%、どちらともいえない12.5%。
永瀬六段がアンケートでは大優勢に。

佐々木六段「これ誰かプロの人コメントで教えてくれないんですかね?」
そしてコメントで出てくる自称プロ達。しかし…
佐々木六段「具体的な手を言ってくれる人が誰もいない…」

asahi21
優勢じゃないかと見られる局面でじっくり水分補給する永瀬六段。
今思えば渡辺二冠の姿勢評価関数が正しかったか。

しかし佐々木六段が先手がいい変化を発見。
佐々木六段「ようやくまともなことを考え付いたような気がする」
熊倉女流「流石ですね先生、本領発揮ですね」

ここでもう1回アンケート
先手・渡辺二冠31.1%、後手・永瀬六段47.7%、どちらともいえない21.1%。
熊倉女流「先生はどちらですか」
佐々木六段「私は3番です」

渡辺二冠はほぼノータイムで佐々木六段が解説した先手がいいという手順に進む。
佐々木六段「本気で考えたら当たりましたね(ドヤ!」
コメントの8五角を解説し、
佐々木六段「これいい手っぽいですね。
多分どっかのプロが8五角と打てって言いましたよ」
ここで熊倉女流が別の手を示しましたが、まさかの手番間違い。
佐々木六段「それ二手指し…」
熊倉女流「絶妙手に見えたんですけどね…」
二歩に妙手ありに続く新たな格言誕生か。

局面は先手がいいと佐々木六段。
金をただで取られるから選ぶわけが無いと思った手順で、
むしろ指せるというのを渡辺二冠が示しました。
佐々木六段「金取らせて王様を固めるというのは流石の手順だったと思います」

永瀬六段は長考後に2二桂とひねった受け。
佐々木六段「ここでは飛車取ってみたいですね。
なんかこうふんづまりみたいになってるから」
※2一と2二の桂馬が3一の王様の退路をふさいでいるという意味。ふんづまり。
そして渡辺二冠も飛車を取り、銀を王手と放り込んで
佐々木六段「渡辺先生は仕事が早いな。詰むのかな。
こういう手順で必死かけて勝ちってことなんでしょう」
ところが渡辺二冠が違う手を指して、
佐々木六段「今日はあんまり日がよくない」
私もテニスでホームランした時とかにこの言い訳を使おうと思います。
ほどなく永瀬六段が投了となりました。

佐々木六段「途中の形勢判断は私間違ってましたね。流石でした」

そして初手からの解説に。
佐々木六段「打った桂馬と金を取られちゃうけど王様が堅くなる、
というのが流石の手順でした」

隣の郷田九段対屋敷九段の対局がまだ終わりそうにないということで一旦休憩に。

質問メール
師匠の高橋先生はニコニコではアニメの話とかをします。
弟子のうち熊倉さんは露骨に引いていると言っていましたが、本当のところはどうですか。
熊倉女流「許せなくは無いですよもちろん」
佐々木六段「引いてるんですか?」
熊倉女流「うーん…昔は引いてましたけど全然許してます。オールオッケーです」
佐々木六段「許してあげてください、師匠を」
これは引いてそうだ。

そして郷田屋敷戦を初手から並べることに。
屋敷九段の主導で矢倉から、すぐに▲2五歩をきめての棒銀に。
屋敷九段はここ1年2年くらいで急激にこの手順を指すようになったらしい。
筋がいいとは言えないので、腕力が無いと指せないと佐々木六段。
屋敷九段は守りのはずの左の銀も攻めに使って大乱戦に。
熊倉女流「形勢はどうなんでしょうか」
佐々木六段「形勢ですか?ぱっと見屋敷九段がやれてると思うんですけど」
飛車取り放置や歩の頭に銀が出る手など華々しい展開の将棋でした。
郷田九段の桂馬のただ捨てに、屋敷九段が同飛成りと飛車を自陣に戻したため、
おだやかな流れになって後手ペースに。
同金じゃまずかったのかなあと佐々木六段。
最後は郷田九段が屋敷九段の王様に殺到して寄せきりました。
感想戦によると郷田九段の桂馬のただ捨てに、
同飛成りではなく同金と取れば先手勝ちだったらしい。
それを聞いた佐々木六段はご満悦。

この結果、次は渡辺二冠対郷田九段の対局になりました。
佐々木六段「普通に考えると角換わりとか矢倉なんですけど、
タイトル戦を戦ってますから、ちょっと外してくると思うんですよ。
渡辺さんが後手ならゴキゲン中飛車じゃないですかね」
※渡辺二冠と郷田九段は3日後に王将戦第2局を戦います。

戦型予想アンケート
角換わり14.3%、矢倉23.5%、渡辺二冠の後手ゴキゲン中飛車33.5%、
横歩取り14.8%、その他13.8%。

振り駒で渡辺二冠の先手に。
郷田九段は対局前に脇息を変える。脇息の格調が低かったか。

佐々木六段「角換わりか矢倉かな」
熊倉女流「矢倉押しです」
対局が始まり、郷田九段が角換わりを選択。流行ってすごい。

佐々木六段「この二人はちょうどタイトル戦の真っ最中なので、
ここを勝って弾みをつけたいんじゃないでしょうか」
先手の飛車が4八にまわる流行の戦型に。
佐々木六段「僕角換わりは人生で3回くらいしかやったことないです」

端から攻める手順を解説する佐々木六段
「これは金と桂香の2枚換えですけど、
守りの金を剥がしたことが大きい…かもしれない」
前例を並べて、この局面はちょっと先手持ちと佐々木六段が言った瞬間に、
渡辺二冠は前例と違う新手を指しました。
それに対して佐々木六段は3つくらい候補手を挙げましたが、郷田九段は違う手を指し、
佐々木六段「まったく当たんなかったですね。
こんだけ言って当たんないというのもすごいですね。
何でこの手わかんなかったんだろう」
そして…
佐々木六段「コメントでいい手流れてこないかな。
結構ここのコメント当てにしてるんですけどね」
熊倉女流の候補手を渡辺二冠が指して、
佐々木六段「流石ですね熊倉流ですね。天才です。渡辺クラスですよ」
振り飛車党なので角換わりの解説に苦労する佐々木六段
「定跡に詳しい誰か…プロの方が書いてくれると嬉しいんですけど」
コメント頼みである。

アンケートどっちを持ってみたいか
佐々木六段「僕は結構受けるのが好きだから郷田九段を持ってみたいんですけどね」
熊倉女流「じゃあ私は先手で」
先手・渡辺二冠40.0%、後手・郷田九段38.9%、どちらともいえない21.0%。
佐々木六段「お、激戦ですね」

郷田九段が歩を垂らす。
佐々木六段「と金を作られると攻めにくくなるんですね。
なのでこういう時に攻める技術がある人じゃないと、角換わりは指せないんです。
なので私は苦手です」
それに対し渡辺二冠は自陣角を打ちました。これがいい手だったようで郷田九段長考に。
解説によると受けてもどうも攻めが決まっているようだということで、
郷田九段も端から攻めあいに行きました。

というところで大盤解説がまさかの休憩に。機材調整?

休憩明けではいつの間にか郷田九段の王様が金銀4枚で守られている状態に。
渡辺二冠はそこを避けて端から手をつけて、
桂馬を入手してから金銀の壁を崩しに行きました。

形勢判断アンケート
熊倉女流「先生はどちらを持ちたいですか?」
佐々木六段「言うとだいたい逆なんですよね。
自身が無いほうを言えばいいんですね。じゃあ先手よしで」
熊倉女流「じゃあ私は後手で」
熊倉女流の逆張り定跡か。
先手・渡辺二冠44.6%、後手・郷田九段36.6%、どちらともいえない18.8%。

渡辺二冠が先に秒読みになるという意外な展開になりました。
郷田九段は角を切って来いと渡辺二冠の攻めを催促します。
渡辺王将が細い攻めをつなげるか、催促した郷田九段が受けきるのか、という展開に。
秒に追われて駒を落とす渡辺二冠とか貴重なシーンだ。
と思ったら秒に追われた郷田九段も駒を落として、
熊倉女流「おあああ!」
お互い駒を落とすぎりぎりの終盤戦で、
佐々木六段「私の予想では渡辺先生が結構勝ち、かなあ」
もはや予想である。
しかし終盤は渡辺二冠の攻めが切れませんでした。
飛車と銀と拠点の歩の3枚の攻めなんですけどねえ。
佐々木六段は竜取りにかまわず寄せに行く手順を解説していましたが、
渡辺二冠は竜を逃げて、
「逃げたのは冷静かもしれない。秒読みだから安全策をとってる感じですか」
しかし郷田九段は持ち駒をべたべた貼って粘りにいき、
佐々木六段「結構攻めあぐねているというか、素人目にはそう見える」
※素人目(六段)
さっきより見込みが出てきたのか郷田九段は駒音高く△5五桂。
そして渡辺二冠の金引きにノータイムで△4七歩成り。
何だか急に元気になったように見えてきました。
しかし渡辺二冠は頭を抱えながらも決めに行きます。

佐々木六段「これ絶対4一金ですよ。これ外したらもう…ねえ」
熊倉さんをあきらめますが飛び出すかと思って期待してしまいました。
佐々木六段「5六桂馬これも絶対当たりますよ。他の手を指したらちょっと。
私が当たると言った以上絶対当たります(ドヤ」
残念ながら?当たってしまいました。
しかし次の手は
佐々木六段「常識的には4五桂だけど…絶対ではない(保険」
渡辺二冠は4五桂でした。倍プッシュ行けばよかったのに。
その後も着実に攻める渡辺二冠を、
今日は安全に行くってことなんですねと言う佐々木六段。
佐々木六段「今日の渡辺さんはこうだと思いますけどね(慎重な手)」
熊倉女流「絶対ですか?」
佐々木六段「絶対…うん…」
渡辺二冠は佐々木六段の解説通りに慎重な手を指しました。
次の手は5三銀成りを予想
佐々木六段「今日はそういう日」
熊倉女流「絶対ですか」
佐々木六段「絶対…絶対じゃないかな。ちょっとここはね、考えたくなりますよ」
そして渡辺二冠は1一竜。
佐々木六段「今回は絶対じゃないって言ったから大丈夫」
ほどなく渡辺二冠の勝ちになりました。

佐々木六段「結構最後は差がつきましたけど、
途中まではどっちがいいか難しい戦いでした」

後手負けの局面にあえて誘導し、研究手順でばっさり斬りにいった永瀬六段、
先に変化して研究手順をかわし、王様を固める好みの展開で勝ちきった渡辺二冠、
序盤から定跡を外して自由に攻めかかる屋敷九段、
堂々と受けて立って桂馬のただ捨てから逆転する郷田九段、
1回戦からそれぞれの棋士の個性が良く出た対局だったと思います。
2回戦も堂々と攻めを呼び込む郷田九段に、細い攻めを見事に繋げる渡辺二冠と、
早指しの方が棋士の特徴や好みがよく出るのかなあと思いました。
また、解説の佐々木六段の選ぶ言葉が妙に俗っぽくて面白かったです。
聞き手の熊倉女流は、先崎学九段が
「女流のタイトルなんで全部持ってしまうのではないかと思うこともあれば、
アマチュア初段ぐらいじゃないかと思うこともある」
と著書で述べていますが、渡辺二冠のちょっとひねったような手を当てる時もあれば、
うっかり王手角取りされたり二手指ししたり、
確かに強いのか弱いのかよくわからないという感じがよくでていました。
個人的には、チャンスがあったら佐々木語録を使おうと思った一日でした。