サッカー日本代表が発表され、ワールドカップも近づいてきました。
サッカーの川淵チェアマンは今や日本将棋連盟の非常勤理事ですし、
元日本代表の波戸康広さんは将棋親善大使ですし、
去年日産スタジアムでサッカーと将棋のコラボ企画もやっていましたので、
将棋とサッカーの関連性について少し書きたいと思います。

将棋もサッカーも相手のカウンターにどう対処するのかという部分で共通しています。
将棋の場合は取った駒を敵陣に打ち込むことができますので、
例えば自分の王様が取った駒を相手の王様の隣に「王手!」と打ち込むような、
すごい速さの速攻ができます。
その代わり2歩というルールで歩については制限を加えています。
サッカーの場合は足でボールを扱うので、どうしてもボールを取られる機会ができます。
その代わりオフサイドというルールでカウンターに制限を加えています。

カウンターが嫌ならカウンターの機会を減らしてしまえばいいじゃない、
という考え方が、将棋で言えば手厚い将棋、
サッカーで言えばポゼッションサッカーになります。
それに対してカウンターが嫌なら嫌なことをすればいいじゃない、
という考え方が、将棋で言えば振り飛車、角交換振り飛車、横歩取り、
サッカーで言えばロングカウンターサッカーになります。
そして攻撃の主導権を握り続ければいいじゃない、
という新しい考え方が、将棋で言えば居飛車穴熊、矢倉91手組の先手番、
サッカーで言えばショートカウンターサッカーになります。

tutumori
 第3回電王戦第4局、ツツカナ対森下九段の対局で、
ツツカナが手厚い将棋、森下九段みたいな将棋と言われましたが、
上の図はその対局の72手目の局面です。
ツツカナがラインを上げて押さえ込みに行くところで、森下九段が背後を突きました。
ポゼッションサッカーも同様に、ラインを高く設定するために背後が弱点になります。
日本代表で言うと、2010年のワールドカップ直前まで、
岡田武史監督はポゼッションサッカーを模索していました。
ところが守備が安定せず、
本番ではブロックを作って守るロングカウンターサッカーに軌道修正し、
4試合で2失点という鉄壁の守備を構築しました。
そして何故安定しなかったのかという理由が、将棋と同様に背後を突かれるからです。
当時のセンターバックは仲澤選手と闘莉王選手、
日本代表としては高さと強さ、足元の技術を高いレベルで持つ屈指のDFでしたが、
残念ながらスピードはありませんでした。
そしてスピード不足なこととラインを高く設定するポゼッションサッカーが相性が悪く、
背後を突かれた時の対処ができずに守備が安定しなかったのです。

hujihabu
 上の図は2012年の王位戦第2局、羽生王位対藤井九段の対局の25手目の局面です。
低く構えてロングカウンターという狙いがよくわかります。
 
hujihabuf
そして上の図が投了図です。
藤井九段の左辺の飛車、角、桂馬、香車、綺麗に捌けています。
このように低く構える将棋の場合、足の速い駒をどう捌くのかが重要になります。
そしてこれはサッカーの場合も同様です。
2010年のワールドカップではブロックをつくり守備が安定した日本代表ですが、
攻撃では4試合中フリーキックで2点、流れの中で2点と不満が残る結果になりました。
将棋のロングカウンターは足の速い駒を使うことが条件でしたが、
当時の日本代表はポゼッションサッカーを目的に人選をしたため、
縦にスピードのあるMFがおらず、ロングカウンターがうまく機能しませんでした。

hujiino
 上の図は藤井システム登場局、藤井九段対井上九段の対局で、
藤井九段が仕掛けたところです。
注目は飛車や角といった足の速い駒はまだ待機状態で、
銀や桂馬といった小回りの利く駒で速攻を仕掛けているという点です。

hujiino2
 上の図は36手目の局面で、駒割は先手の銀桂と後手の角の2枚換えですので、
先手の駒損と言えます。ただし攻撃の主導権は先手が握っています。
 
hujiinof
上の図は投了図で、駒割は先手の銀桂と後手の飛車の交換ですが、
もう先手の攻撃が止まらない状況になっています。
この図は将棋とサッカーの違いが出ていて、サッカーはゴールがひとつあるだけですが、
将棋はなんだかんだ言っても飛車の価値が高いので、
飛車方面に攻撃を仕掛けることも有効的です。

サッカーで言えば小回りの利く駒は俊敏性のある選手、
駒損でも攻めを繋ぐということは、
ポゼッションでリードされていても、主導権を握っていればよいということになります。
そしてザッケローニ監督がやりたいサッカーが、このショートカウンターサッカーです。
サッカーで主導権を握り続けるにはどうするか、
というのはまだまだ進化し続けていくことになりますが、
ラインを高く保つこと、前線に人数を増やして縦にどんどんパスを出していくこと、
ボールを取られた瞬間に人数を増やした前線で囲んでボールを奪い返すこと、
これらが求められます。
上の藤井システムの対局では、
藤井九段が井上九段の王様の周辺で戦い戦果を上げていますが、
ショートカウンターサッカーも同じで、なるべく局地戦にすることが重要です。
何故ならボールを取られた時に選手同士の距離が遠いと、
ボールを囲んで奪い返すことが出来ずに戦術が破綻してしまうからです。
2013年のコンフェデレーションズカップで守備が崩壊してしまった原因もこれで、
グランドを横に広く使うことで攻撃は多彩になりましたが、
守備は3試合で9失点とひどい結果になってしまいました。
上の藤井システム登場局の場合は、飛車という重要な駒を攻めることで、
局地戦からの戦線拡大に成功しましたが、
ショートカウンターサッカーにも、
小さいリスクで攻撃の多彩さを保障するものが存在するのか、
ザッケローニ監督は本番直前まで模索すると思います。
そしてこのようなサッカーをする場合、
DFは縦パス供給能力、背後を突かれてもケアできる足の速さ、パスカット能力、
MFは縦パス供給能力、パスカット能力、足元にボールを納める能力、
FWはパスカット能力、足元にボールを納める能力、
そして前線からボールを奪いに行くわけですから、
サボっている選手が1人もいない組織力や戦術理解度が求められます。
日本人の特徴とされる俊敏性、献身性、
足元の技術の高さはこのサッカーを支えるのに有利に働くでしょうし、
うまく機能すれば空中戦、1対1といった弱点が出る局面は少なくなるでしょう。

サッカー日本代表の人選を見ると、リードしていてもされていても、
自分達のサッカーを貫くんだという意志を感じます。
日本代表は6月15日の対コートジボワール戦が初戦で、
20日に対ギリシャ、25日に対コロンビア戦です。
25日は日本時間で朝の5時から、
将棋の名人戦が第7局までもつれれば2日目がかぶって超絶寝不足が決定です。
日本代表はグループリーグを突破したことが2回しかないサッカー新興国ですので、
まずはグループリーグ突破に向けて頑張って欲しいです。

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