森内竜王名人×川上量生特別対談~「第3回将棋電王戦」公式ガイドブック発売記念~
ブログ地政学を英国で学んだより「創造性を上げるには「孤独」になれ」から抜粋
●アメリカでは「新グループシンク」(New Group Think)というべきものが大流行中ある。これは「グループや集団でどんどん働きましょう」という考え方だ。
●この典型的なのが、「オフィスの壁を取り払って、アイディアを交換しながら、創造的に働く」という最近の職場環境の風潮だ。
●ところがこのような風潮には大きな問題がある。なぜなら最近の心理学の調査研究では、人間というのはプライバシーが守られ、邪魔から自由になると創造性を発揮する、という結果が出ているからだ。
●ある心理学者の調査では、あらゆる分野で共通する「最も創造的な人物」というのは、大抵は内向的であり、たしかにある程度はアイディアを交換したりするくらい活発なのだが、それでも彼らは自分たちのことを「独立した個人主義者だ」と考えるのである。
●これらの調査が示しているのは、内向的な人物は一人で静かに働くのを好み、しかも孤独な状態がイノベーションを生み出す、というものだ。
●ある有名な心理学者によると、「内向的な人々は目の前の仕事に思考を集中させ、仕事とは関係のない社会的や性的なことに余計なエネルギーを漏らさないようにすることによって」創造性を高めるというのだ。
●たしかに歴史を見て行くと、孤独が人類の創造性を生み出してきたことは否定しがたい。ピカソは「孤独がなければ、優れた作品は生まれない」と言っている。
●宗教で言えば、モーゼやイエス、それに釈迦も孤独を必要とした。われわれは彼らのようなカリスマに注目はするが、その思想が作られた背景にある「孤独」というプロセスを軽視しすぎている。
<中略>
●心理学の最近の研究結果として出ているのは、オープンなオフィスはそこで働く人々を「敵対的にして、不安にさせ、集中力を失わせる」ということだ。また、彼らは高血圧になりやすく、ストレスにさらされ、カゼにかかりやすく、疲労もたまりやすいという。
●他の人に邪魔される環境で働く人は、孤独に働く人々と比べて仕事で5割ほど間違いを犯しやすくなり、仕事を終えるのに2倍かかるという。
梅田望夫著「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語」より
三浦さんは、研究パートナーの若手棋士と一日がかりでアパートに篭って
研究するそうですが、三浦さんは調理人のプロなんですよ。
若手が素材を集める人だとして、その素材を三浦さんが調理する。
若手としては、自分が集めた素材が「これだけの料理になるんだ」
という驚きがあると思います。
自分もこれくらいの調理ができるようにならなければいけない、
ということも学ぶでしょう。
そしてどのくらいのクオリティの料理になったら、
いちばん強い人を相手に指してもいいものか、
つまりその手を世に出せるだけの調理の基準も学ぶわけです。
<中略>
でも調理の奥は深くて、かなり濃く共同研究をやる三浦さんでも、
若手に調理の奥の奥までは見せていないでしょう。
私も調理の根幹は一人でやります。そこが本当の研究だと思います。
優れた調理人は一人厨房でこつこつ研究するものだと思います。
将棋世界2014年03月号
¥750
ドワンゴの川上量生会長と、森内俊之竜王名人の対談の動画です。
正直な感想を言うとこの二人の対談なら司会の方もプロにすればよかったのに、
と思ってしまいました。
インタビューは水物ですが、
川上会長にこのまま放送終わっちゃうんですかと突っ込まれちゃーだめでしょう。
まあそれはともかく。
他の棋士がどれくらいコンピュータを使っているのかは知らない、
これからどう変わっていくことになるのかは分からない、
という話が面白かったです。
棋士は個人競技ですが、例えば他の個人競技であるテニスやゴルフの選手には、
フェデラーやタイガーウッズといった選手にさえコーチがいますが、将棋にはいません。
そのため棋士一人一人が、
コンピュータとどう関わって自分を高めていくかというテーマに取り組むため、
他の棋士がどうするのかはその人次第ということなのでしょう。
また、棋士は創造ということも必要になる仕事ですが、
他の棋士がどうしているかは知らないということは、
創造性を発揮する場に他人はいないということに繋がります。
ブログ地政学を英国で学んだより「創造性を上げるには「孤独」になれ」から抜粋
●アメリカでは「新グループシンク」(New Group Think)というべきものが大流行中ある。これは「グループや集団でどんどん働きましょう」という考え方だ。
●この典型的なのが、「オフィスの壁を取り払って、アイディアを交換しながら、創造的に働く」という最近の職場環境の風潮だ。
●ところがこのような風潮には大きな問題がある。なぜなら最近の心理学の調査研究では、人間というのはプライバシーが守られ、邪魔から自由になると創造性を発揮する、という結果が出ているからだ。
●ある心理学者の調査では、あらゆる分野で共通する「最も創造的な人物」というのは、大抵は内向的であり、たしかにある程度はアイディアを交換したりするくらい活発なのだが、それでも彼らは自分たちのことを「独立した個人主義者だ」と考えるのである。
●これらの調査が示しているのは、内向的な人物は一人で静かに働くのを好み、しかも孤独な状態がイノベーションを生み出す、というものだ。
●ある有名な心理学者によると、「内向的な人々は目の前の仕事に思考を集中させ、仕事とは関係のない社会的や性的なことに余計なエネルギーを漏らさないようにすることによって」創造性を高めるというのだ。
●たしかに歴史を見て行くと、孤独が人類の創造性を生み出してきたことは否定しがたい。ピカソは「孤独がなければ、優れた作品は生まれない」と言っている。
●宗教で言えば、モーゼやイエス、それに釈迦も孤独を必要とした。われわれは彼らのようなカリスマに注目はするが、その思想が作られた背景にある「孤独」というプロセスを軽視しすぎている。
<中略>
●心理学の最近の研究結果として出ているのは、オープンなオフィスはそこで働く人々を「敵対的にして、不安にさせ、集中力を失わせる」ということだ。また、彼らは高血圧になりやすく、ストレスにさらされ、カゼにかかりやすく、疲労もたまりやすいという。
●他の人に邪魔される環境で働く人は、孤独に働く人々と比べて仕事で5割ほど間違いを犯しやすくなり、仕事を終えるのに2倍かかるという。
孤独な環境で仕事をするほうが創造性や正確性、時間的効率が上がるという話ですが、
棋士には研究会というのがあり、意見交換も活発です。
それについて深浦康市九段は次のように述べています。
梅田望夫著「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語」より
三浦さんは、研究パートナーの若手棋士と一日がかりでアパートに篭って
研究するそうですが、三浦さんは調理人のプロなんですよ。
若手が素材を集める人だとして、その素材を三浦さんが調理する。
若手としては、自分が集めた素材が「これだけの料理になるんだ」
という驚きがあると思います。
自分もこれくらいの調理ができるようにならなければいけない、
ということも学ぶでしょう。
そしてどのくらいのクオリティの料理になったら、
いちばん強い人を相手に指してもいいものか、
つまりその手を世に出せるだけの調理の基準も学ぶわけです。
<中略>
でも調理の奥は深くて、かなり濃く共同研究をやる三浦さんでも、
若手に調理の奥の奥までは見せていないでしょう。
私も調理の根幹は一人でやります。そこが本当の研究だと思います。
優れた調理人は一人厨房でこつこつ研究するものだと思います。
創造性を発揮するための材料を集めるにはいろいろな人と関わった方がよく、
創造性を発揮する場では他人を排除し、一人厨房でこつこつ研究する、
深浦九段はそう述べています。
また、動画の中で森内竜王名人はコンピュータを、
疑問に思った局面を検索させるという使い方はすると述べています。
森内竜王名人はponanzaがネット対局で指した新手を名人戦で指しましたから、
深浦九段の言う素材を集める手段の一つにコンピュータが入ったということでしょう。
渡辺明二冠も著書「勝負心」の中で、
自分の考えた手をコンピュータに入力して考えさせる、
好手や盲点になっていた手、見落としを指摘してくれると書いています。
これもコンピュータ将棋が、タイトルホルダーの材料集めに使えるレベルまで強くなった、
ということの証拠だと思いますし、
伝統芸能の将棋の棋士が一人厨房でこつこつ研究し創造性を発揮させる場に、
とうとうコンピュータがデータベースという立場ではなく、
材料を提供するパートナーとして入り込んだというのも大変興味深いです。
材料を提供するパートナーとして入り込んだというのも大変興味深いです。
森内竜王名人が動画の最後に言っていますが、
タイトル戦でのカレー定跡はカレーを連投していると言われてしまったので、
他のものを頼みにくくなったかららしいですよ。案外ネットに詳しいのかもしれませんね。
将棋世界2014年03月号
¥750