日本に長寿企業が多いことはご存知の方も多いと思います。
世界で200年以上の歴史のある企業は、
アメリカに14社、インドに3社、ドイツに800社、西ヨーロッパに200社あるのに対して
日本には3000社以上もあると言われています。
チャンスがあれば巨大な企業は誕生しますが、チャンスだけでは200年は続かないのです。
細く長く目先の利益にとらわれず、といった考え方は共感できる方も多いのではないでしょうか。

それではゲームの世界ではどうでしょう。
例えばファミコンソフトのスーパーマリオブラザーズは日本で681万本、
世界ではなんと4024万本売れたと言われる大ヒットゲームですが、
今もなおテレビにファミコンをつなげて
スーパーマリオブラザーズをしている人はほとんどいないでしょう。
ところが、チェスや将棋、囲碁、といったゲームは、
起源がはっきりわからないくらいの大昔から遊ばれ続けています。
将棋に関して言えば、1607年の初代大橋宗桂対本因坊算砂の対局の棋譜が、
最古のものとして残されています。

それでは長く愛されるゲームは何が違うのでしょうか。
シミュレーションゲームの父と呼ばれているシド・マイヤー氏は
「良いゲームは魅力的な選択肢の連続である」("a good game is a series of interesting choices")
と述べています。
チェス、将棋、囲碁に限らずこの条件に当てはまる他のゲームは楽しいでしょうか。
例えば麻雀は?野球は?サッカーは?あなたが長く遊び続けている何らかのゲームは?

私の好きなゲームのひとつに信長の野望というゲームがあります。
簡単に説明すると、戦国時代の大名のひとつを操作して全国制覇を目指すというゲームです。
ところがこのゲームは、最初は楽しいのですが徐々につまらなくなっていきます。
例えば、関東地方のどこかの大名家で初めて、関東地方を平定するくらいまでなら楽しいのですが、東北地方を平定する頃にはすっかり飽きてしまいます。
シド・マイヤー氏の言葉を借りれば、
関東地方を平定するくらいまではゲームに魅力的な選択肢があふれているのですが、
東北地方を平定して圧倒的な兵力を手に入れた頃にはすっかりなくなり、
この先中部、近畿、中国、四国、九州を平定するまで膨大な作業が待っている、
といったところでしょうか。
途中で飽きるということはゲームを観戦していても起こります。
野球を見ようとテレビをつけたらすでに10-0くらいになっていた場合、
日本シリーズのような重要な試合でなければ他のチャンネルに変える人も多いと思います。

それでは観戦していて面白いゲームとは何でしょうか。
私は「魅力的な選択肢の連続」が「最初から最後まで続く」ゲームが楽しいと思います。
そこで将棋ですが、上記の観戦していて面白いゲームに当てはまるでしょうか。

2012年9月5日、渡辺明王座が挑戦者に羽生善治二冠を迎えた
第60期王座戦五番勝負の第2局にて、
対局開始から5分後、後手番の羽生挑戦者の4手目で早くも観戦者が騒然となりました。
両者持ち時間が5時間もある対局で、わずか5分後に騒然となったわけですから、
魅力的な選択肢が最初からあるということだと思います。
また、羽生さんは途中で「パスしたいけど、パスがない」と感想戦で述べるような不利な状況だったのですが、22時15分には検討しているプロの方が
「どこで逆転したのだろう。夕食休憩のあたりは先手がよかったのに」
というような展開になり、22時22分に先手番の渡辺明王座が投了しました。
これは「魅力的な選択肢の連続」が、途中で形勢に差が出ていても「最後まで続く」ということだと思います。

しかし将棋は難しいと感じている方も多いと思います。
渡辺明竜王は著書「頭脳勝負」の「はじめに」で次のように書いています。

将棋の場合、「難しいんでしょ」「専門的な知識がないと見てもわからないんでしょ」と
スポーツに比べて、敷居が高いと感じている方が多いように思います。
確かに、将棋は難しいゲームです。しかし、それを楽しむのはちっとも難しくないのです。
<中略>
将棋を指すのは弱くとも、「観て楽しむ」ことは十分できます。
例えばプロ野球を見るとき。「今のは振っちゃだめなんだよ!」とか「それくらい捕れよ!」
サッカーを見るとき。「そこじゃないよ!今、右サイドが空いてたじゃんか!」
<中略>
言いながら見ますよね。それと同じことを将棋でもやってもらいたいのです。
「それくらい捕れよ!」と言いはしますが、実際に自分でやれと言われたら絶対にできません。
「しっかり決めろよ!」も同じで自分では決められません。
将棋もそんなふうに無責任に楽しんでほしい。

本ブログでは、将棋の魅力とともに将棋の世界に生きる棋士達の魅力を紹介できたらと思っています。
よろしくお願いします。