森内俊之九段、三浦弘行九段、阿久津主税八段、伊藤真吾五段の間で争われた、
朝日杯将棋オープン戦第4ブロックは、
伊藤五段が阿久津八段と三浦九段を破り準決勝進出を決めました。

ニコニコ生放送では14時から、
解説に戸辺誠六段、聞き手に室田伊緒女流二段で大盤解説会が始まりました。
振り駒の結果と金が4枚出て、
先手となった三浦九段はうんうんうんと3回うなずいていました。
これは研究炸裂か。

戸辺六段「角換わりの将棋の可能性が高いです。
しかしこの二人はお互い序盤の研究が十分だと知っているので、
逆にお互いが意図的に力戦に持ち込むということもします」

注目の序盤は三浦九段が矢倉を選ばず、森内九段が横歩を選ばず、角換わり、
と思ったら森内九段が角道を止めました。
角換わりの流行にノーと言える男。
矢倉模様になりましたが、
先手が▲2五歩を決めているので今の定跡形ではない戦いになりました。
お互い飛車先の歩を切って、なおかつ▲8七歩や△2三歩と謝らずに、
着々と攻撃形を作っていきます。
こういった飛車角桂香を使う軽い形の将棋は三浦九段は得意と戸辺六段。
戸辺六段「この二人なら三浦さんが攻め将棋かなと、森内九段が受けかなと」
森内九段が攻めになる組み合わせってあるんだろうか。
力戦なので序盤からスローペースになりました。
戸辺六段は戸辺攻めと呼ばれる攻め将棋なのですが、
解説でも角を切って派手に攻め込む手順を並べてわかせてくれます。
戸辺六段「昨日中継を見ていたんですけど、見ていても緊張感がありますね」

将棋の棋士は癖などもお互いよく知っているという話題になり、
室田女流「棋士の方は棋士の物まねがうまいですよね」
戸辺六段「昔から真剣に盤を挟んでいるので、
こういうこと言いそうだよねとか話していると自然に出来ちゃうんです」
室田女流「先生も、カメラ戻ってきましたけど」
戸辺六段「無茶ぶりですか?気分が乗ってきたらやります」

宣伝タイム
棋士のLINEスタンプが昨日から発売らしい。

asahi41
生放送中に購入するという斬新な宣伝方法の室田新手。LINEの棋士スタンプ100円です。

盤上では三浦九段が横歩、森内九段が矢倉を指しているような、
よくわからない局面になりました。

戸辺六段「今は振り飛車にこだわってやってるので、
あまり居飛車は指さないですけど、居飛車の将棋も並べれば勉強になるので。
でも見るのとやるのじゃ違いません?」
室田女流「新鮮な気持ちで指せます」
戸辺六段「先入観が無いから自由な手が指せるじゃないですか。怖いもの知らずで」
室田女流「この局面の急所というのはどこですか」
戸辺六段「この将棋は先手から手が作れるか、
駒が当たる場所はだいたい8筋なのでそこで戦いが起こせるか」

asahi42
プロ同士だったら後手を持ちたいという人の方が多いらしい。
私が後手で指したらすぐに崩壊しそうなんですが…。
戸辺六段「手が分からない時は見たことのある自然な手を指すのがいい」
後手なら矢倉を作ったり端歩を突いたりしてから、
相手の8四歩に何かアクションをするのがいいとのこと。
先手の王様がここならいいんですけどねと美濃囲いを作って、
戸辺六段「何の解説かわからないですけど、トベアイ。
とりあえず振り飛車にして考える」

戸辺六段曰く、
トッププロは分からない局面で、まあこんなもんかと指す手がすごくいい手なんですね。
戸辺六段による渡辺二冠評なのかもしれない。

局面は三浦九段が攻めて森内九段が受ける展開。
しかし森内九段はもう1分将棋になってしまいました。

三浦九段の▲5三歩の垂らしに、
戸辺六段が取っちゃだめなんですよと解説しかかったところで、
森内九段はさっと△同角。
あれ?ということで考え込む三浦九段。
しかし三浦九段は予定通り桂馬で▲4五桂と角銀両取りをかけました。
森内九段はどうするんだろう。
戸辺六段「先手が優勢じゃないとおかしいというか指せるんじゃないかなと思います」
その後も三浦九段が2、3、7筋の歩を突いてあちこちから攻めていきました。

そうしていたら阿久津八段と伊藤五段が退室。
室田女流「隣千日手らしいですね」
戸辺六段「へー、個人的には嬉しいですけど」
そしてすぐに阿久津八段対伊藤五段の対局が再開されました。
朝日杯は休憩がほとんどないんですね。

その後も三浦九段は、
銀を呼び込んだり歩を捨てて形を乱したり、細かい技を駆使して攻めていきます。
戸辺六段「森内九段がちょっと辛いですね。必死に頑張ってるんですけどね。
三浦九段の揺さぶりがうまくて崩されちゃってますね」
早指しは実践的に戦うというのがよく出てくるとのこと。

asahi43
なるほど、狙っている手が見えましたとにんまりの戸辺六段。

戸辺六段「いやー三浦さんがすごくうまく指しましたよね。
自陣手付かずでなかなかこういう展開にならないですから」

その後も手数は長くなっても絶対に負けませんという、
手堅い寄せを三浦九段が見せて、
戸辺六段「痛いですねー」
室田女流「さっきからずっと痛いですねーって言ってる」
この将棋はこれに尽きます。
そして三浦九段がどう寄せきるのかという局面でさっと受けの手を指し、
室田女流「ああ、辛い」
戸辺六段「辛すぎます」
指し手を奪って投げなさいという指し方なんですよと戸辺六段。
そしてとうとう森内九段の王様が詰まされ、三浦九段の勝ちになりました。
昨日の羽生三冠の将棋もそうでしたが、
朝日杯くらいの早指しだと、所謂友達を無くす手という決め方が多い印象があります。

終盤の面白いところということで、阿久津八段と伊藤五段の対局も大盤解説に。
解説が開始してすぐに伊藤五段が△9二玉と早逃げ。
伊藤五段は粘りが特徴と戸辺六段。
先手の王様も7七にいて、もう最終盤といったところですが、
局面は先手の阿久津八段がよさそうだけどまだまだわからないと戸辺六段。
しかし阿久津八段が伊藤五段の攻めを手抜いての角成りに、
戸辺六段「大丈夫ですか?これで勝てたら相当強いですけど」
どうやら伊藤五段がうまく指したようで、
阿久津八段の王様が即詰みなんじゃないかとの解説。
戸辺六段「阿久津さんがこういうミスをするのは…。
すごく踏み込む棋風ではありますけど…」
そして伊藤五段が阿久津八段を破り、2回戦進出を決めました。

asahi44
これで写真撮られるのはつらい。△9二玉の早逃げがドラマを生みました。

この将棋を初手から解説に。
序盤は伊藤五段の角交換からダイレクト向かい飛車。
阿久津八段はいきなり▲6五角と咎めにいって大乱戦になりました。
千日手の指しなおし局なので、持ち時間が無くなっています。
室田女流「初手から1分だから大変ですね」
戸辺六段「なかなか経験したことないですけどね、気合が大事ですかね」
中盤金桂香と飛車の3枚換えになり、阿久津八段が駒得の分優勢に。
その後も阿久津八段が快調に攻め立てていきます。
戸辺六段「阿久津さんが決めに行って焦ったんですね。なるほどわかりました。
阿久津さんは勝ちになったら一直線で勝ちに行くタイプなんですよ」
不利な伊藤五段は攻めたり守ったり、
相手に読まれないような手を指しているように見えました。
そして伊藤五段の△7二桂に、
室田女流「これに騙されてしまったんですかね」
戸辺六段「騙されましたねこれは」
この桂馬が△6四桂と跳ねた時に、
阿久津八段の王様に詰めろがかかるという罠でした。

19時からの三浦九段と伊藤五段の対局は、伊藤五段の先手になりました。
戸辺六段「伊藤五段が先手ということで、振り飛車は間違いないと思うんですけど、
初手▲7六歩か中飛車を宣言する▲5六歩か。
初手合いですが、二人は研究会をしているという話も聞かないので、
本当に初手合いかもしれません」

伊藤五段の初手は▲5六歩。
先手中飛車になり、後手の三浦九段は居飛車で迎え撃つ構え。

戸辺六段「三浦九段は棋譜を並べてみると、
若い頃は振り飛車穴熊も結構多かったです。
三浦将棋は局面をごちゃごちゃとやって、終盤の切れ味を出すという特徴があります」

開始早々両者意地を張って早くも前例が無い将棋になりました。
戸辺六段が三浦九段は持久戦を選んだと解説したところで、
伊藤五段は▲1八香と上がって穴熊に囲おうとしますが、
それを見た三浦九段が飛車先を突いて急戦の構えを見せて、
伊藤五段はなかなか▲1九玉と潜れません。

室田女流「それでは質問メールに」
戸辺六段「あ、このタイミングでいくんですか」

質問メール
将棋世界で、かりんの将棋上り坂↑というコーナーが始まりました。
※戸辺六段が講師役、伊藤かりん(乃木坂46)さんが生徒役での連載です。
コーナーが始まった経緯を教えてください。
去年から将棋を始めて、今5級くらいで壁に当たっているようなので、
本人もやる気十分なのでお手伝いできたらということで始まりました。
何で自分なのかなと思いましたが、
どうもファンの方を相手に将棋教室を長くやっていた、
ということが考慮されたみたいです。
とりあえず初段が目標です。
当初居飛車党と聞いて、いろいろ準備したんですけど、
最近振り飛車覚えたんですよと言われたので、
じゃあ振り飛車でいきましょうということになりました。

盤上では三浦九段が飛車先の歩を突き捨て、角道も歩を突き出して開けました。
伊藤五段もここを凌げば穴熊に囲う手が残っているので、丁寧に対応していきます。
とうとう穴熊に潜る手が回り、伊藤五段満足な序盤でしょうか。
戸辺六段「これなら先手持ってみたい気がしますね」
戸辺六段は振り飛車党ですが、奨励会3級くらいまでは居飛車党だったそうです。
そこで壁に当たっていたところで、
鈴木大介八段が練習将棋ですごく楽しそうに振り飛車を指しているのを見て、
最初に振り飛車穴熊から入ったらしいです。
奨励会は香落ちの対局が多いので、
王様を固く囲って、ごちゃごちゃした戦いに持っていく指し方を目指したらしい。
戸辺六段「僕が大山先生の将棋を勉強してると言うと、
戸辺君が一番大山先生からかけ離れてるだろうと言われるんですよ」

ここでヒフミンアイになり、
戸辺六段「加藤先生と対局していて、
席を外して戻ってきたら僕の座布団の後ろから鬼の形相で見てるんですよ。
その時はまた外へ歩きに行きましたけど」
室田女流「流石に押しのける勇気は無かったと」
戸辺六段「いやいやいやいやいや。
まさか、ねえ、大先生があんなに楽しい先生だとは思わなかったんですよ。
あ、井山さんはどんな方ですかってコメントがありますけど」
室田女流「スルーしようかと思ったんですけど、普通の方です、ふふふ」
※室田女流のだんな様は囲碁界のスーパースター、井山裕太四冠です。

宣伝コーナー
盤上の詰みと罰という漫画を戸辺六段が監修しているのでよろしくとのこと。

と言っている間に伊藤五段が秒読みに。

asahi45
戸辺六段「何か嫌な筋があるのかな?」
三浦九段はじっくり自陣の銀を前線に繰り出す手を見せ、
伊藤五段は1人で千日手をする手待ちに。
戸辺六段によると伊藤五段は千日手を1局で3回やったことがあり、
三浦九段も若い頃は千日手厭わずというタイプだったらしい。
戸辺六段「お互いいい意味でねちっこいというか、
将棋の場合はねちっこいとかしつこいは褒め言葉ですからね。
私も軽くてしつこいと言われたことがあります」
室田女流「ふふふ」
軽くてしつこいは普通の世界だと相当ダメな部類だと思います。
盤上では三浦九段が快調に攻め始めました。

asahi46
戸辺六段「伊藤さんは必ずしも苦しいからこういうポーズではなくて…」
ここから伊藤五段は飛車銀交換の勝負手を繰り出しました。
室田女流「形勢の方はいかがですか」
戸辺六段「少し後手の三浦さんがよさそうですが、
先手の方が手数計算がしやすいので、
三浦さんからぴったりしたこの手で勝ちということが無ければ穴熊ペース」

ここで戸辺六段が「私には指せない」という手を伊藤五段が指し、
三浦九段が妥協したような応手。
戸辺六段「おあぁこれいい手だったんだー」
これはどっちが勝っているのか。
その後も伊藤五段は戸辺六段が読んでいない手を連発し、
戸辺六段「ほー↑」「そこですかーんーぎりぎりの…おぁー」
これは準決勝見えてきたか。
しかし最終盤三浦九段は粘りに粘り、
振り飛車党を応援するファンにとっては心臓に悪い展開になりました。
戸辺六段「まだ伊藤さんが優勢ですが、もうミスは許されない局面になってます」
そして長手数の即詰みがあるかもしれないという局面で、
伊藤五段も踏み込んで詰ましにいき、
三浦九段が投了して伊藤五段の準決勝進出が決まりました。
これはかっこいい。

戸辺六段
いやー本当に、何というか興奮しましたね。これぞ振り飛車というか。
中盤には歩の手筋がありましたよね。
三浦さんの方も最善を尽くして頑張ったと思うんですけど、
すごい終盤切れてましたね。

戸辺六段は三浦九段と伊藤五段について、
研究会という話も聞かないから本当に初手合いかもと言っていましたが、
三浦九段と伊藤五段の対談記事を読んだことがあったような、
と思って本を漁ったらありました。
将棋世界の2012年2月号で、伊藤四段(当時)と三浦八段(当時)が対談しています。
それによると伊藤五段が奨励会三段時代に、
三浦九段が声をかけて研究パートナーになった時期があったようです。
伊藤五段がフリークラスから上がった直後ということで、
記事ではずいぶんフランクな三浦九段を見ることが出来ます。

三浦九段
「伊藤君のことは私生活も含めてよく知っていますが、
最近は顔つきが違っていた。
彼女と別れてから、将棋に集中しだしたでしょう」
「でも最近、女性と話す機会が多すぎた。もっと将棋に集中しないと。
私はこれから女性を遠ざけます。伊藤君を見習って」

などなど伊藤五段を困らせています。
気持ちはいつでもウェルカムなんですよと反論する伊藤五段に、
「それじゃまた勝てなくなるよ」とたたみかけたりもしています。
また、伊藤五段は将棋の研究もよくしているし、明るいしということで、
先輩から誘いやすいらしく、
奨励会三段の時は三浦九段以外にも、木村八段、丸山九段、
深浦九段、藤井九段といったトップ棋士と研究会をやっていたようです。
その対談記事には、16連勝で迎えた屋敷九段との対局では勝負にならなかった、
トップ棋士はすべてが違うと伊藤五段が述べていますが、
今日の終盤の勝ちっぷりはかっこよかったですよ。