森内俊之竜王に糸谷哲郎七段が挑戦する第27期竜王戦七番勝負第2局は、
森内竜王の封じ手で初日が終わりました。

ハワイでの前夜祭では、
一神教とシャーマニズムについてというテーマで挨拶をしていた糸谷七段ですが、
第2局はハロウィンを絡めたスピーチをしてくれました。ハロウィン新手?
堂々のスピーチで初のタイトル戦とは思えない貫禄があります。

第2局は糸谷七段の後手番ということで、戦型予想は
「一手損角換わりじゃないでしょうか」by桐山九段
「一手損角換わり以外考えられない」by脇八段
「オーソドックスに進めば一手損角換わり」by畠山七段
「本命は一手損角換わり」by大石六段
「一手損角換わりだと思います」by記録係・池永三段
ということで満場一致で一手損角換わりでしたが、
皆さんの予想通り糸谷七段の一手損角換わりになりました。

ニコニコ生放送では9時から解説に森下卓九段、
聞き手に安食総子女流初段で大盤解説会が始まりました。

森下九段「後手一手損角換わりは、
振り飛車の一手損角換わりやゴキゲン中飛車などいろいろな定跡が混ざっていて、
まだこれだという定跡がない。
後手が△8五歩と突かないで角を交換し、△8五桂の余地を残す方が、
一手損をする損よりも得だというのが最初の主張だった。
その後は角交換振り飛車とも融合し、複雑で未解決な定跡になった」

ponanzaは早くも先手+200。コンピュータは一手損角換わりはしないと森下九段。
リレー質問は電話がかかってきたので聞き逃す。うそーん。

丸山九段が指す一手損角換わりは、後手の王様の位置が3二玉。
森下九段は2三の地点を金で守りたいので3二金にしたいらしい。
王様をどこにもって行くかも個性が出るとのこと。
糸谷七段の挨拶のハロウィンネタを聞いて、
森下九段「あ、そうなんですか!へー。余裕がありますねぇ」
西遊棋の運営も糸谷七段がやっているらしく、挨拶は案外慣れているのかもしれない。

質問メール
今回の第二局は一手損角換わりになりました。
一手損は特定の棋士しか指さなくなった印象ですが、何故ですか。
森下九段も一手損角換わりを少し前まで指していた。
全体的に勝率が悪いので指さなくなった。今指すのは青野九段、丸山九段、佐藤九段。
若手の棋士は横歩取りが多い。
戦法が悪いかどうかは何とも言えないが、どうも先手の勝率がよくて下火になっている。
先手の早繰り銀と7八玉型の相性が非常によくて、勝率もいいから。
山崎八段も一手損をさすが、山崎流といえるような大胆さ、スケールがある。
ここ2年くらいで先手の77銀、78玉、68金の片矢倉のような囲いが、
早繰り銀との相性がよいことがわかった。
将棋の神様天野宗歩先生がこの囲いを指していたので昔からある囲いではある。

糸谷七段が席を外すことについて
糸谷七段が席を外したが、棋士によってペースがあり、森内竜王は全く動かない。
いつも海に行く先生もいた。いろんな話をしている棋士もいた。
今は対局場で全然話さないが、昔はいろんな話で盛り上がっていた。
昔は三段特権というのがあって、その中にも先輩後輩があったので、
いい対局の記録はなかなかとれなかった。
今は羽生さんの記録もすぐとれる。
ただし関西は対局が少なくて、いい対局もいっぱいあるので、
関西の奨励会員が関東にきて記録をとることもある。
私が三段だったら全部とりたいくらいなのに不思議。
相手がどんなに偉い先生でも、感想戦では疑問に思ったことは聞いてよかった。
記録係が大山先生や中原先生に聞いてもよかった。
大山先生と青野先生の対局の記録をとったときに、急戦が失敗した将棋だったが、
疑問に思ったことをぶつけたら青野先生に丁寧に答えていただいた。

糸谷七段が持ち時間をさほど使わず、戻ってからすぐに指すことについて
私は指す一手は決まっているけど、自分だけさっさと指してもいいのかなと思って、
ちょっとバランスを取るみたいなことはあった。

質問メール
現在初段を目指して勉強中です。大局観がわかりません。
手筋や詰め将棋はこたえがあるが、大局観は漠然としていてこれだというものがない。
ある程度指針があって、駒得は裏切らないじゃないですけど駒の損得。
次に駒の働き。
一番重要なことは将棋は敵玉を詰めたら勝ち、自玉が詰められたら負けなので、
駒は基本敵玉にせまるのか、自玉を守ろうとするのか意識をつける。
自玉や敵玉から遠い駒から動かすといい。自玉の近くにいる駒はそれだけで働いている。
中盤の折衝あたりから常に意識して、
駒が守りに向かっているのか敵に向かっているのかを考えるだけで将棋が違ってくる。
初段前後なら飛躍的に駒の働きが違ってくると思う。

10時に糸谷七段にほうじ茶プリンのおやつが登場して
森下九段「糸谷七段はおやつも有名。
いつも差し入れを持ってくる。確かお酒は飲まれないと聞いた」
ここでプリンを食べて席を外す糸谷流が出ました。

棋士の先生方は、羽生先生のチェス、森内先生のバックギャモンなど、
ボードゲームをする棋士がいますが、他にもいますか?私はリバーシをやります。
私はオセロは子供の頃にずいぶんやって、ほとんど負けたことが無かった。
技を編み出して、簡単な思考なんですけど、隅をとるのがいいので、
隅の隣には自分の石が来てはいけない。
その隣に自分の石がくるようにして、小学生低学年の時に気づいて連戦連勝だった。
碁が好きで、幼稚園の頃から知っていた。父がいつも並べてたのを見ていた。
将棋で四段になってから本格的に始めた。将棋より覚えたのは5年早い。
将棋はたまたま4年生の正月に雨が降って、
それじゃ将棋を教えてやろうということになってその時に覚えた。
囲碁の井山さんは将棋は長考派でなかなか終わらないので、
室田女流は夫婦での将棋はやらなくなったらしい。
安食女流はボードゲームが結構弱い。
森下九段はトランプの大貧民をめちゃくちゃにやった。
中学生くらいの年齢で、ちょうど奨励会員の同門の先輩が上に住んでいて、
研究会が6時か7時に終わって、みんなで餃子を山ほど買ってきて、
食べながら徹夜でやっていた。それを1年半くらいやった。結構殺気立っていた。
朦朧としてダイヤとハートを間違って出すとかをすると怒られた。
奨励会で一番楽しい思い出。
学校行って将棋指して、大貧民を朝まで。あれで結構体力ついたのかもしれない。
大貧民が大好きすぎて、ギャンブルにまったく興味がわかなかった。
花村先生にギャンブルはやめておけと言われていたが、
大貧民のおかげかまったくギャンブルをやりたいと思わなかった。

真剣師の花村先生がギャンブルはやめておけと言うのは説得力がありますね。

森下先生がツツカナを相手にすばらしい棋譜を作られ、
40代の終わりに差し掛かっていても、
非常に気力が充実している森下先生を見て、情熱を維持できる秘訣を教えてください。
なかなか秘訣が無くて、情熱というのが一番難しい。
年齢を重ねますと体力が落ちるとかいろいろ問題があるが、一番は情熱。
これはなかなかもどらない。
自分を変えたいなと思うところもあって電王戦に立候補した。
プロは注目されて強くなるなと思った。
ファンの方からの励ましなんかもあって、だんだんだんだん情熱がもどってきた。
ここ10年で一番情熱がある。私の場合はたまたま電王戦だった。
後輩の高野先生に勝てる気しないんだと相談されたことがあるが、
その時僕は勝つ気がしないんだと答えた。
電王戦では若い頃C級2組に5年いて苦しんだ時くらい勝ちたいと思った。
10代だと死ぬほど大貧民とかで盛り上がるが、
夢中でできるものを何か一つ持って頂きたいなと思います。
花村先生に恨まれたり憎まれたりする言動をするなと言われた。
恨まれたり憎まれたりすると、情熱が無い相手にも情熱を燃やさせてしまう、
そういうのがあるんじゃないかなと思った。
若いときは人に嫌われちゃだめなんだなくらいだったが、
今は死に掛かっている相手の情熱を呼び覚ましてしまうんだなと思った。

モリシタ集めについて、どのようにして生まれたのか。
きっかけ、開発秘話などを教えてください。私は初日に名人になりました。
私は単に声を吹き込ませていただいただけだった。
20通りくらい台詞があって、それぞれ低い声、普通の声、高い声と3通りで60通りほど。
開発者はまだ新入社員の若い女性だった。
入って1年にならない方。ドワンゴさんのクリエイティブなところなんでしょう。
出た時は家内のスマホを借りてやった。
9月の20日だったと思うが、電王戦タッグマッチの時に、
この人が開発者ですと紹介されて驚いた。
恥ずかしがっちゃいけないと自分に言い聞かせて声を吹き込んだ。
高い声が相当恥ずかしい。
大貧民にはまっていた中学2年生の時の写真もでてくる。
マックス村井さんという方がいて、
ユーチューブでモリシタ集めをやっている動画があった。
視聴回数が10万を超えていた。
子供に聞いたらマックス村井がやるのは相当凄い、
こんなゲームをとりあげるのはおかしいから、
これはドワンゴさんがそうとう金を積んだのではないかと言われた。
高校生なんでスレてるんですね。

律儀先生はメールの冒頭の挨拶にいちいちお辞儀をして挨拶を返す律儀な先生でした。

なんとかツツカナに勝ちたいので力を借りようと、
酒とコーヒーをやめて、なんとか勝たせてくれと思ったら、
まったく意外な効果が出て8キロ痩せた。
今は体が軽いので2時間くらいの正座なら全然平気。ツツカナの前は30分くらいだった。
相手がコンピュータなので天の力を借りようと酒とコーヒーをやめた。
酒よりコーヒーがきつかった。代わりに炭酸水が増えた。なんか活性化するらしい。
今までもお酒はやめようとしたが、ルールなのでどうしても破ってしまう。
そのため今回は天への誓いとしてやった。

そして律儀先生が駒の歪みを直し始めました。
横から見ると綺麗に整って見えるが、画面を見ると結構ゆがんでいるとのこと。
その後安食女流の兄弟子の西尾六段の話題に。
西尾六段は奨励会の幹事をやっていてすごく怖いと評判らしい。
英語のblogを作っていて、海外の方にも将棋の情報を発信しているとのこと。

対局中の行動制限などあるのでしょうか。
コメントで外に出てコーヒーを飲んでもいいの?とか流れましたが。
明確な基準は無いと思われます。
私が棋士になって間もなく、対局中は外出禁止になった。
しかしどうもそれが良くないんじゃないかとなって、今はそれが無い。
外にコーヒーはどうなのか。自宅に帰るのはどうなのか。
温泉アウトと今コメントされた方は相当詳しい方。
超がつく大先輩が立会人で麻雀をうっていて、
他の棋士に温泉にいってきますといわれてだめだと答えたことがある。
麻雀は何かあってもすぐに対局場に行けるが、
温泉はすぐには来れないから駄目だと言ったらしい。この辺は個人の良識。
明快な基準が無いままあいまいになっていることは結構ある。

アンケート将棋の棋力
六段以上1.4%、五~三段7.4%、二段~一級29.7%、わからない15.3%、
全くの初心者35.9%、プロまたはプロ予備軍10.2%。

先日西尾ponanza連合軍と森下ツツカナ連合軍で戦った。
プロが自分以外の力に頼っていいのかという気持ちもあったが、
安心感がすごい。終盤が心強い。
こないだの西尾さんとの将棋は矢倉で定跡だったが、
途中でまさかの手順、飛車損の攻めがきた。
ところがツツカナの評価値があがらない。
こっちが飛車得でも五分の将棋なんてありえるのかと思った。
コンピュータは駒の損得に敏感なのですぐに評価値が上がるはずだと思ったが、
そうはならなかった。将棋ってすごい手があるなーと思った。
ツツカナもその手は読んでいたが、私はまさかと思った。
コンピュータ将棋はそういったまさかという展開がある。私も結構練習はした。
加藤先生は加藤流なのでそんなの見向きもしませんが。
結構楽しいが、最終局はツツカナの数値が全然あがらなくて、
これからはこういう時代なのかなと思った。まさかという手が結構眠っていると思った。
固定観念が必ず悪いなら誰も持たないが、
その考えで今までやってきたというのがあるので、その葛藤が人間にはある。

盤上ではNHK杯の羽生山崎戦と同じ進行に。

森下九段は子供の頃から手付きがよくて、君は手つき八段だねと言われた。
森下九段「手つきも結構芸ですよね」
人差し指の詰めのところと中指の腹のところでうまく挟んでぱしっとやる。
手つきがいいと見た目もいい感じ。べちゃっとやるよりもぴしっとやるのがいい。
ただしぴしっとやりすぎるのもよくない。
昔荒巻先生という大先輩がいて、四段か奨励会の頃だが、
将棋は指すもので打つものじゃないぞと注意された。
師匠よりも大先輩なのでその後は改めた。
当時は花ちゃんの弟子と言われていて、花ちゃんの弟子それはよくないぞと言われた。
ふすまは出てる方をあける。出てない方だと向こうから相手があけたときに指を挟む。
女流だと清水市代女流が姿勢がいい。所作が綺麗。茶道とかもやっている。
森下九段は師匠の花村先生の後援会の方に厳しい人がいて、
所作を教えてもらったらしい。

森下九段が奨励会員のときは、青野先生が一番怖かった。
順位戦の次の日はみんな眠い。
青野先生が森下君、そういうときこそ記録をとらなきゃだめだと言われた。
青野先生は理不尽というのは全く無かったが、厳しくて怖い先生だった。
この時の奨励会幹事は、他に佐藤義則先生と沼春雄先生だったが、
この二人の先生は優しかった。青野先生は目を合わせるのも怖かった。
安食女流も師匠の青野先生に、
気がつかずに失礼なことをしてしまったときなどは怒られた。
ある若手棋士のタイトル戦で若手棋士と仲間が来ていて、
関係者とテーブルをはさんで会食した。
その後帰ろうとしたので、青野先生が一言挨拶をしてから帰りなさいと言っていた。
森下九段「びしっとこう言ってくれる先生はありがたいですよね。
私なんかはなかなか言えないんですけれども」

広瀬王位対羽生挑戦者のタイトル戦の時に、
小堀清一先生の話を羽生さんがして、
記録の少年とか記者の方とかにジュースやパンを配っていたと話していた。
小堀先生は見た目しかめっ面で怖い印象があった。
羽生さん是非そういう大先輩の話はあなたが広めた方がいいよと言った。
安食女流も教室で初めて教えてもらったのは小堀先生だった。
※サッカーの岡田監督との対談をまとめた「勝負哲学」という本の中でも、
小堀先生について羽生さんが話しています。印象に残っている先輩棋士なんでしょう。

質問メール
森下先生は北九州の生まれですが、方言などは覚えていますか。
大分は北九州と共通する方言がたくさんあります。
私はしゃーしーがうるさいというのが印象に残っています。
しゃーしーは北九州ではよく使われている。
何してるをなんしよん、博多はなん↓しよん↑、北九州はなん↑しよん↓でちょっと怖い。
大分の湯布院が北九州弁と同じだった。
鹿児島本線沿いは博多に近い言葉。
森下九段は家内も北九州で、二人で話すときは北九州弁。
コメントでしょんなかねが出てきたんですけどそれは博多ですね。
しかたないという意味なんですけど。
子供は全然違います。家内のお姉さんの娘は土着の北九州弁です。
東京で外にいるときに奥様に北九州弁でうっかり話すと怒られるらしい。

日本シリーズ中ですが、ひいきの球団はありますか?
クラウンライターライオンズ。小倉球場に行った。
阪神の帽子がカッコイイと思った。後は王監督の大ファンだった。
クラウンライターは当時白天仁という選手がいてとても好きな選手だった。
今監督の秋山幸二さんは選手のときに、
自分なんかは王監督の前に出たら声も出ないほど緊張するのに、
若い選手は平気で話していて驚いたと話していて、わかるなーと思った。
安食女流は羽生さんと会った時に普通に挨拶しつつ内心どきどきしたらしい。
森下九段「豊川先生だったら内親王とか出てくるところですかね?」

どちらを持ちたいかアンケート
森内竜王36.8%、糸谷七段21.5%、にゃんともいえない41.7%。
安食女流「こないだ家で見てたときににゃんともに入れてしまいました」
森下九段は後手一手損のこの形は居玉ということもあって指しにくいとのこと。

昼食アンケート
そば47.6%、とんかつ38.1%、中華そば14.3%。
昼食休憩までの考慮時間は、森内竜王2時間6分、糸谷七段1時間14分と1時間近くの差。

大盤解説再開直後に糸谷七段が席を外し、森内竜王も席を外して、
記録係と観戦記者と座布団2つという謎の中継に。

森下九段「地元はむつみ幼稚園とひかり幼稚園が2大幼稚園で、
1年生の時から「お前むつみだな?」みたいな感じで派閥があった。
いやー人間って派閥を作る動物なんですねえ」
謎の中継の後はこの謎の派閥談義である。

棋譜用紙を確認する糸谷七段を見て、
森下九段「この段階で見ることって何もないと思うんですけどねえ」
森下九段も結構棋譜を1枚って頼むタイプだが、何を見ているってわけでもないらしい。

その後初手から解説に。
午前中は森内竜王が棒銀に出て一触即発だったが、
午後に入って穏やかな流れになった。

質問メール
8月の東急将棋祭りの最終日に行きました。
一番の目当ては指導対局でしたが、抽選で外れてしまいました。
指導対局を見ていて、森下先生が一番丁寧に感じましたが、心がけ等はありますか。
緩めてくれてませんかと言ってくる方がたまにいるが、
指導対局は教わっている人がいい手を指せる局面を作ってあげるというのが、
上手の芸だと自分は思っている。
プロ同士だと相手の手を消すことを考えるが、
指導対局は楽しんで強くなってもらうことが目的なので、
下手の人が頑張ればいい手が思いつく、という局面を作ることにしている。
丁寧といえば昔後援会の方が、花村先生が色紙に1枚1枚丁寧に書いているのを見て、
ずいぶん丁寧に書かれるんですねと聞かれて、
自分は何十枚も書くが、受け取る人は1枚なのだからと答えていた。
若い頃はふーんと思ったが年を取ってからなるほどなと思うようになった。

形勢判断をより正確に出来るような勉強方法を教えてください。
私は二段くらいですが、読み通りに進んだのに不利になったということがあります。
将棋はあいまいとしていることが多い。
基本的にはまず駒の損得を見る。大抵駒を損していると将棋は厳しい。
続いて駒の働き。いくら駒得していても遊んでいたら厳しい。
将棋は自玉が詰まされたら負け、相手玉を詰ませたら勝ち。
例えばこの先手の26銀は攻め駒。77銀は守り駒。
守り駒はいるだけでも役に立っている。26銀はいるだけでは何も意味が無い。
攻め駒が働いているかどうかは常に考える。玉から遠い駒を働かせる。
相手から考えると、働いていない駒に働きかけてしまうと、
相手の遊び駒を働かせてしまう、
倒れている相手を起こすようなものなのでまずい。
今この局面で必要な駒は何かを考えておく必要がある。
今桂馬が必要だとか角が必要だとか、そういうことを考える。
後は玉の堅さ。今の言葉で勝ちやすいというのがあるが、玉が堅いと勝ちやすい。
それと自陣に不備が無いか。
将棋は相対的なものなので、相手と比べて硬いとか、
自分の駒も遊んでいるが相手のほうが遊んでいるとか、そういう判断でよい。

おやつタイム
森下九段「記録係にとって一番厳しい時間。2時から4時くらいが一番きつい。
また、昔は対局者にお茶を注いできてなどと頼まれたので、
1回立って足が復活したが、今は対局者が自分で用意してしまうので立つ機会が無く、
昔よりきついのではないか」
今日のおやつは宗家源(みなもと)吉兆庵さんの栗きんとんとのこと。
森下九段は一瞬で食べ終えてしまい「非常においしかったです」
消費時間は先手2:44、後手1:39。糸谷七段が時間ではリード。
初タイトル戦ですが時間配分がだいぶ上手くいっています。

ティロフォンは畠山鎮七段から。いきなり電話が切れてしまうトラブル。
畠山七段「皆様こんにちは。
立会人を勤めさせていただいております畠山鎮でございます。
モリシタ集めのいいですねーを聞いて非常にテンションがあがったんですけど、
なかなか初段がとれずに怒られてばかりでした。
桐山先生が一発で二段になられまして。
昼休みに盛り上がって読売の方が七段までいきました。
この電話でいいですねーと言ってもらえればいいんですけど」
森下九段「いいですねー」
098
モリシタ集めでいきなり二段をとった桐山九段と驚く畠山七段。
その後は局面の検討に。
▲1六歩と突いたいじょうは▲1五歩△同歩▲1四歩と仕掛けていくのかな。
後一手▲7八玉が入れられるかどうか。その瞬間角を打たれる危険がある。
その電話中に森内竜王が▲1五歩と指しました。
糸谷七段が席に座っているのを見て、
畠山七段「あ、戻ってきましたね。戻ってきたら着手早いですからね。
そしたらまた席を外して、戻ってきたらまた指すという呼吸かなと」
両者わりとリラックスしている様子で、
糸谷七段も前夜関係者だけの食事会だったが非常にリラックスしていたらしい。
※畠山七段は糸谷七段が奨励会員だったときの奨励会幹事で、
奨励会員の中でこんなに叱った子はいない、
というくらい厳しく礼儀作法を教えたそうです。元気な少年時代だったんですな。

ブログ「死ぬまで生きよう!」より「糸谷哲郎五段のこと・・・

中盤、形勢は自分の圧倒的勝勢だったが、
ある一手を指したときに不思議なことが起こった。
糸谷少年がかけた王手にすいと5五に逃げた自分の玉を、
いきなりもぎ取るようにつかんで、
脱兎のごとく席を離れて部屋の中を駆け回ったのである。
糸谷少年の父親を含む観戦者はなにやらニヤニヤしているが、
自分には彼のその行為の意味が分からない。
するとセンターの人が言った。「角が利いているところに逃げたねー」。
「あっ!」そういうことか、それで糸谷少年は歓喜のあまり王様を取って逃げたのだ。
やっと意味が分かったし、全然気づかない失態だった。

畠山先生の苦労が目に浮かびます。

ponanzaの評価値は森内竜王の+87。その後読み筋が変わって評価値も+35に。
盤上では森内竜王が珍しく前傾姿勢になって考え込んでいました。

質問メール
竜王対名人の頂上決戦から見始めました。
女流棋士発足40周年記念パーティーに行ったり、駒桜会員になったり、
ここまで将棋に興味をもつことになるとは思いませんでした。
プライベートで旅をするとしたら行ってみたい、住んでみたい場所はありますか。
森下九段
私は北欧に行ってみたいですね。お菓子の国っていうイメージがあるんですよ。
ノルウェーなんかは海賊時代もあったんですけど、かわいいイメージがあるんですよね。
安食女流
ブラジルは結構おすすめです。リオデジャネイロに住んでたんですけれども。
まだ子供だったので踊ってないです。カーニバルはお留守番していたんですけれども。
アマゾンでピラニアを釣って食べたりもしました。
現地のみんなで棒で叩いて殺して夕飯にするんですよ。
叩いたのが印象に残りすぎてフライだったのか何なのかは覚えてないんですけど。
ドラードを姉が引き上げて凄いことになったのを覚えています。
大人の方が手伝ってくれて。落ちたら結構大変なことになるんですよ?

森下九段は地元でライギョをとったことがあるらしい。
永井君がライギョ取りの名人で、私は永井君がとるのを見てたんですかねと言ってました。
森下九段「あとカナダも行ってみたいですね。大自然といいますかね」
安食女流「マチュピチュとかも行ってみたいです」
森下九段「渋いんですけど四国八十八箇所めぐりとかもしてみたいですね。
旅行は最高の贅沢かなーと思います」

森下先生の有名な言葉に駒得は裏切らないという格言があります。
私は初心者ですが、高段者の方からも聞くことがあります。
森下先生がその考えに至った理由や、エピソードなんかあれば教えてください。
駒得は裏切らないというのはたまたま昔書いた本に載せて、
例えばチェスですと取った駒が使えないですけれども、
将棋はそうではないので、
無条件で1歩損したら9対9から10対8になって2割の差になります。
これが金銀桂香だと3対1と3分の1になってもっと大きく損をするんですね。
そう考えるとうかつな損は出来ない、とりあえず突き捨てるという事がいいんだろうか、
と若い頃から常々考えていまして。奨励会の頃からかもしれないです。
時と場合によるんですけれども、歩を突かれて同歩ととるとどうなるのかを考えて、
だめで取らないならいいんですが、この人が突いてきたなら何かあるんじゃないか、
というのは最初から負けている考え方なのでやってはいけないんですね。
あと大山先生の言葉で、取っても悪い、取らなくても悪いなら取った方がいい、
というのがあります。なるほどやっぱり大山流の実利的な考えだなあと思いました。
アマチュアの方は楽しく強くなって欲しいので、
何かあるんだろうけどわからないという場合は、
取って手を教えてもらおうという考えくらいの方がいいですね。
鈴木輝彦先生が1森下というネーミングを考えました。
鈴木先生は棋風としてどんどん歩を突き捨てるので、
対局しているとどんどん溜まるんです。

将棋界とそれ以外で一番影響を受けた人物と、エピソードがあれば教えてください。
安食女流
将棋界ではやっぱり師匠の影響が大きいですね。
将棋界に入ったのも遅かったので、大学2年生くらいだったので、
本当に知らないところでいろいろびっくりしたこともありました。
後は礼儀とかそういう面で将棋に関してもそうなんですけど、
一門会でも毎月教えてもらっていました。
ここならプロなら必ず指す一手があるけど分かる?とか聞かれて、全然分からなくて、
派手な手なのかなと思って探していたら後々利いてくる一手で。
将棋外では大学に行った時に大学の先生とかですかね。
キリスト教の大学だったのでそういう精神とか影響を受けました。
あまり宗教とかそういうのは無かったので。
知らないというのは恥だというのを聞いてなるほどと思いました。
森下九段
将棋界では花村先生に6年半くらいみっちり教わりました。
花村先生を別にさせていただいたら、…やっぱり花村先生が圧倒的ですかね。
子供の頃基礎がつく時にみっちり教えてもらいました。
後は中原先生や米長先生。実戦集を句読点に至るまで暗記しました。
弟子の増田君にも言ったんですけれでも、
羽生さんの将棋は羽生さん以上に君が覚えなくてはいけないと。
暗記が出来ないような勉強法では話にならないんで。
それができないんじゃーもういかんと思いました。
それができてから次のステージですね。
羽生さんの対局を1局残らず暗記しなさいと言いました。
25歳までは出来ればアナログで自分の頭で考えて、
25歳過ぎたらデジタルの力を使ったらいいのではないかとも言いました。
将棋以外だとこの方ひとりというのは難しい。
いろいろな方の本を読んで影響を受けているんですけれでも、一人となると難しいです。
※増田君とは増田康宏四段のことで、
森下九段門下で今年の10月1日付けでプロ棋士になりました。

凝り形とは自分の駒同士がお互いの長所を消しあっている状態のこと。
相手の凝り形に働きかけると急に相手の駒が捌けてしまう。
駒同士お互いの長所を伸ばして短所を補うような格好がいい形。

質問メール
挑戦者の糸谷七段は早見え早指しで有名ですが、
よく解説とかで、なになにさんは長考派なので、
1分将棋は慣れていますからというのもよく聞きます。
早指し棋戦は長考派と早見え派どっちが有利だと思いますか。
長考派の加藤先生は一分将棋の神様とも言われて、NHK杯でも7回くらい優勝している。
確かに長考派の人は普段から秒読みに慣れている。
早指し派は秒読みだと追い込まれて早く指さないといけない、となるので、
強い方はどっちでもいいのかもしれないが、
普段秒読みを経験しているほうが多少いいんじゃないか。
花村先生が直感というのを非常に重んじられていて、
局面をぱっと見て、10のうち9まで正解がわかるなら初めて考える意味がでる、
とにかく番数をこなして直感を磨けと言われて、
上野の将棋センターに6年生と中学1年生くらいの間は通っていた。

投了に関する質問ですが、
棋士の方が投了する時は、頭の中にどのようなことを思い浮かべているのでしょうか。
投了の作法というものがあるかはわからないが、
ある程度のプロが見たらこの図は大体投了だろうと言うのは一致する。
例えばあっさり駄目ですねと言ったり、頭金まではいかなくても頑張るタイプといますが、
自分の指した将棋に責任を持つのがプロなので、
投了図に責任を持つというのが大事だと思う。
どうしてもこの11香には一花を咲かせてやりたいとか、
投げる前にこの桂馬だけでも1回飛ばせないかとか、そういうことは考える。
頑張って逆転を目指して指しているのと、ただ指しているのは違う。
投了にもそれぞれ棋士の考え方や個性、見識が出てくると思う。
私は駒に一花咲かせてやりたいというのがある。

詰め将棋の正解者に送られる森下九段のプレゼント色紙は「一手入魂」
昔一歩千金と一手入魂を書いていて、間違えて一歩入金と書いてしまったら、
神吉先生に森下君は一歩入金が一番似合うと笑われてしまったらしい。

立って上から盤を見る糸谷七段を見て、
森下九段「貫禄ありますねー。相手が同年代ならともかく。
糸谷さんと森内さんの年齢差なら、私だと中原先生や米長先生みたいなものですから。
いやー私ではとてもできないですけどね。
でも私も米長先生にすごいこと言ったなというのはあるんですけどね。
みんな若い頃は忘れているだけなのかもしれないですけど」
律儀先生は思ったことを直球で言うので毒舌先生の時もありますが、
何をやらかしたんでしょうかね?

盤上について森下九段
「どちらかというと後手の糸谷さんのほうが待っている。
森内さんのほうは待つことがなかなか難しい」
糸谷七段の△3五歩に
「これは異筋の手。いくら考えても結論が出ない局面なので、
それなら手を渡して決めてもらおうという手。
森内竜王はここで封じるのではないかと思います」
そして定刻10分前になり、
立会人の桐山九段、畠山七段、観戦記者の方も全員集合しました。
そして定刻通りに森内竜王の封じ手になりましたが、ここでもちょっとしたアクシデント。
糸谷七段が封じ手にサインをした後、立会人の桐山九段に渡しそうになり、
あわてて森内竜王が封筒を受け取って、
封じ手をした森内竜王が封筒を桐山九段に渡すシーンの撮影をしました。
封じ手って難しい。
研究の虫三浦九段が封じ手の練習をしたのも当然だったのかもしれない。

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封じ手予想アンケート
▲3四銀46.4%、▲6六歩18.2%、▲2四歩9.7%、▲3七桂6.1%、その他19.6%。
森下九段は▲3四銀を推奨。

明日はニコニコ生放送では9時から、
解説中村修九段、聞き手藤田綾女流初段で大盤解説会が始まります。
中村九段は順位戦4勝1敗、弟子の香川愛生女流王将が10月23日にタイトルを防衛し、
阿部光瑠四段が10月24日に新人王戦で優勝と、波に乗っています。
森下九段が好調の秘訣をリレー質問で聞いていましたが、
なるほど今期の順位戦で中村九段と当たるんですな。
なんて答えるのかも含めて楽しみです。

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