第3回将棋電王戦 第5局 屋敷伸之 九段 vs ponanza


第3回電王戦もいよいよ最終局を残すのみとなりました。
屋敷九段は史上最年少の18歳6ヶ月で中原誠棋聖から棋聖位を奪取し、
初のタイトルを獲得した早熟の天才で、
前年に島朗竜王を倒して羽生善治竜王が作った、
19歳2ヶ月の記録を塗り替える快挙でした。
また、奨励会入会からプロ棋士になるのに3年という記録も、
三段リーグが無い時にプロになった羽生三冠や谷川浩司九段よりも早い記録です。

近代将棋1991年2月号より

屋敷さんの将棋は、変わり身の早さとか、切り替えの早さだという人がいますね。
「そうですか。ボクは一手一手の局面で考えるタイプなので」
なるほど。一本の読みを通していくというより、その時の状況で考えていくと。
盤上の最善手をもとめるというより、相手の考えていない、
意表の手を指してゆくタイプでしょうか。
「ええ。ヘンな手が、浮かぶんです。そしてその手が奇妙に気にかかる性質なんですね」


電王戦では人間は線で考え、コンピュータは点で考えるという特徴が言われますが、
屋敷九段は点で考えて相手を翻弄し、忍者屋敷と呼ばれました。
加藤一二三九段が著書の中で羽生三冠の将棋を「柔」、
森内俊之竜王名人の将棋を「剛」と表現していますが、屋敷九段は柔の将棋と言えます。

第3回将棋電王戦公式ガイドブックより山本一成さんの話

棋風は『ほわほわ』しているという人が多いんですが、ほわほわって何ですかね(笑)。
自由に育って欲しいので棋風とかは考えたことがなくて、
こうあって欲しいというのもないですね。
長所は強いところ。短所は長手数の読みで見落としをするところです。
長手数の読みはプログラムに入れてないんですよ。
以前、優勢な将棋で習甦に四十何手詰めのトン死を喰らったりしていますので。


第1局の習甦や第4局のツツカナは、
厚みを築いて相手の攻撃を跳ね返していく「剛」といった将棋でした。
ですがponanzaは「ほわほわ」ということで、
電王戦出場ソフトを決めた将棋電王トーナメントでのツツカナとの決勝戦は、
柔良く剛を制すという将棋だったのかもしれません。
団体戦としてはコンピュータが既に勝ち越しを決めましたが、
大将戦はどんな将棋になるのか、忍者対ほわほわの対決が楽しみです。

また、山本一成さんがponanzaを使って局面を調べつつ観戦記を書いています。
こちらもどうぞご覧ください。

山本一成とPonanzaの大冒険
電王戦第1局 菅井五段と習甦の観戦記
電王戦第2局 佐藤紳哉六段とやねうら王の観戦記
電王戦第3局 豊島七段とYSSの観戦記
電王戦第4局 ツツカナと森下九段の観戦記

ブログランキング・にほんブログ村へブログランキングならblogram

アンバランス これからはじめる人のための将棋
¥2,127