渡辺明王将に羽生善治三冠が挑戦している第63期王将戦七番勝負第7局は、
後手番の渡辺王将が勝利し、フルセットの末の防衛を果たしました。

最終局と言うことで改めて振り駒がおこなわれ、羽生三冠の先手となりました。
最近の渡辺王将は後手番では振り飛車を多用していますが、
勝った方がタイトルホルダーとなる決着局でもゴキゲン中飛車を採用しました。

ニコニコ生放送では初日の解説が中村太地六段、聞き手が安食総子女流初段でした。
4手目に△5四歩と突いてゴキゲン中飛車の態度を決めた渡辺王将に対し、
羽生三冠がそうきたかーと言いたそうな反応をして、
中村六段「ここまであからさまな反応は面白いですね」
羽生三冠はどう対応するかというアンケートでは
超速3七銀53.6%、超急戦18.2%、丸山ワクチン9.3%、一直線穴熊11.2%、その他7.7%、
となり、各対策の序盤講座になりました。
羽生三冠は超速3七銀戦法を選択しましたが、
これは2014年4月に新四段となる星野良生奨励会三段が編み出した戦法で、
2010年度の将棋大賞で升田幸三賞を受賞しています。
朝食は何を食べましたかという質問には、
中村六段がスムージー、安食女流は餡ドーナツと答えていました。
スムージーがおされな朝食なんだろうか。
森内竜王名人からのリレー質問、米長先生との思い出を語ってくださいには、
奨励会の級位者の時、月一回奨励会の将棋を観てもらっていた、
中学二年の時に負けた棋譜を見てもらって、どこが悪かったと思うかねと聞かれて、
ここと答えたら急所と違う所だったらしく、全然反省する場所が違うといわれた、
目先の利益にとらわれる手を指して負けている、
君が指した手は平社員の手だ、上に行くには経営者の手を指しなさいと言われた、
なくなるときに病室へ見舞いに行って、ベットの上でも将棋界の運営のことを語っていて、
なくなる1日2日前でもそうだった、と答えていました。
室谷女流からのリレー質問は西部の試合を見に行きますかでしたが、
安食女流は早速開幕戦を見に行く、年に1回なのでと答え、
確かに開幕戦は年に1回ですねと突っ込まれていました。
中村六段といえば振り飛車党から居飛車党に乗り換えた棋士ですが、
乗り換えた理由の質問メールには、振り飛車しかできないと戦法を狙い撃ちされてしまう、
将棋の楽しさを半分しか味わえない、
奨励会三段のときだとリスクがあるから、
四段になって1年くらいたったときに居飛車党になったと答えていました。
羽生三冠は超速3七銀戦法を選びましたが、その後急戦ではなく穴熊に組む順になり、
渡辺王将もそうきたかーと言いたそうな表情をしていました。

昼食休憩後の詰め将棋の後は中村六段のサイン本プレゼントコーナー。
字が下手なんですけどと言いつつ「木鶏」という字を上手に書いていました。
筆ペンの持ち方は独特でしたけど。もくけいと読むらしいです。
闘鶏では心が動じない鶏が一番強いということで、
まるで木で作られた鶏のように泰然自若という意味だそうです。
横綱双葉山が連勝記録が止まった時に、
未だ木鶏たりえずと言ったエピソードからその字を書くようになったそうです。
羽生さんの昼食のわさび丼はわさびが袖につくのではないかとの指摘には、
羽生さんは和服でも着るのが早いので、一旦脱いで食べているのではないかとの分析。
これが羽生さんと2度タイトルを争った人の観察眼か。
おやつの時間にはどちらを持ちたいかアンケート。
羽生三冠84.9%渡辺王将15.1%と何だこの羽生人気は。すごい。
おやつもコーヒーと金箔がついたケーキ。すごい。
渡辺王将はコーヒーのみで、体重を気にしていると思われます。
現地のおやつタイムでは渡辺王将が席を外した後に、
記録の川崎三段まで席を外し、川崎新手と大盛り上がりでした。
部屋におやつが用意されるらしく、それを食べに行ったそうで、
羽生さんが一人ぽつんとおやつを食べる変な番組になりました。
盤上では駒組が進み、羽生三冠は穴熊に金を寄せて固める順が残っていますが、
渡辺王将も角を転換して働かせるという大きいポイントの手が残っていて、
固める手よりも転換する手の方が価値が高そうなので、
その手が入る前に戦端を開く手を模索しているのではないか、との解説でした。
解説後の質問メールでは、安食女流がブラジルに住んでいた時のことがあり、
安食女流は小学校1年から4年までいた、
リオのカーニバルは家でお留守番、両親は行っていた、
フルーツもお肉もおいしい。キロ単位で売っている、
食べ物の思い出しかないわけじゃないですよ、
と言いつつ食べ物の話ばかりしていました。
また、大山康晴十五世名人が来て父が案内したらしいです。両親は何者なんだ。
中村六段は羽生三冠のタイトル戦での強さは何かという質問に、
追い詰めても追い詰めてもさらに次がある、
一つの山を乗り越えて押し切れそうになったらまた次の山がある、
押し切ったと思ったら次の土俵があるような感じ、
と、羽生三冠の粘り腰を表現していました。

升田幸三著「名人に香車を引いた男―升田幸三自伝」より
升田幸三六段が木村義雄名人と香落ちで対局した時の話

私は5五角の新手を出し、作戦通り、早々に端を破った。
第2譜に入り、1二香成りと攻め込んでは、すでに優勢確立、
プロ同士の対局としては決定的な差といっていい。
だが、さすが名人、さらさら動じる色がない。
じっと4一飛と受け、タバコの煙を天井に吹きつけておる。ここで私は一息入れた。
「ハハア、これが木村流か。東京の八段連中がコロコロ負かされるのは、
この二枚腰にひっかかるんだな」
そう考えて用心し、攻めを急がず、6六歩から自陣を整備した。


時代を築く人はなかなか土俵を割らないんですね。
羽生三冠は長考の末に戦端を開く手を決断しました。
先日の電王戦では安食女流が初めて夫婦共演しましたが、夫婦初共演の後は、
何話していいかわかんなくてぎこちなくなっちゃったよねーとか言ってましたとのこと。
羽生三冠の仕掛けから銀がぶつかり、渡辺王将に銀を取って交換するか、
取らせて交換するか、交わすか、あるいは関係ない手を指すか、
といった選択肢がある状態で1日目終了まで残り30分になり、
ここで封じ手かとも思われました。
どちらを持ちたいかアンケートは羽生三冠72.8%、渡辺王将27.2%で、
羽生人気がすごいです。
渡辺王将は銀を交わす選択をしましたが、
このシリーズは封じ手をした方が負けているというジンクスがあるらしく、
羽生三冠の封じ手になりましたがフラグになるのでしょうか。

二日目のニコニコ生放送では解説が久保利明九段、聞き手が藤田綾女流初段でした。
振り飛車党の久保九段ですが、現局面は居飛車を持ちたいと述べ、
どちらを持ちたいかアンケートも羽生三冠70.0%、
渡辺王将14.2%、どちらともいえない15.7%と羽生三冠大きくリード。
リレー質問の捌きの意味は何ですかには、
押さえ込むの対極にある言葉、厚みではなく軽快さ、
駒を損しても駒の働きの効率を優先する、と答えにくそうに述べていました。
居飛車党振り飛車党アンケートは居飛車党50.1%、振り飛車党28.7%、
オールラウンダー21.2%と居飛車が過半数。
これを見た久保九段は、
「一時自分がタイトル持っていたときは振り飛車党増えたんですけど、シビアですね…」
安食女流のリレー質問はお勧めお花見スポットは何ですか。
藤田女流は昨日マイナビ女子オープンの対局があった池上本門寺と答えていました。
盤上では羽生三冠の封じ手▲3四銀に、渡辺王将が36分考えて△5四銀。
意外だったのかな?
久保九段の解説は角を素抜いてみたり両取りをかけてみたり、
駒が派手に動いてよくこんな手が見えるなあと思いました。
なんかもうこれが捌きってことでいいんじゃないかな。
居飛車党やオールラウンダーの振り飛車は、振り飛車党の振り飛車と違いますか、
との質問には、居飛車党の振り飛車は捌き特化ではなく、
押さえ込まれないような駒組みをする、どちらかというと押さえ込みな振り飛車、
横歩取りの後手は振り飛車に近い感覚、横歩の先手は押さえ込みなイメージ、
らしいです。振り飛車党で居飛車も指したい方は横歩をどうぞ。
盤上は渡辺王将が羽生三冠の穴熊を歩を使って形を乱していき、
羽生三冠は成り銀を作ってじっと渡辺王将の穴熊に寄せていく展開。
王将戦の面白写真は誰がアイデアを出すのでしょうかとの質問には、
これをやるというのは決まっている、
私はどんな球が来ても打とうと思っていた、言われたままやっている、
自分のやつは恥ずかしくて見たことが無い、らしいです。
渡辺王将が露店風呂に入って新聞を手に満面の笑みを浮かべている写真もありましたが、
羽生三冠が勝っていたらあれをやっていたんだろうか…。
タイトル戦が重なるのは大変ですかという質問には、
久保九段がタイトル2個取られてA級からも落ちた時に、
井上慶太九段に誘われて鳥羽に旅行に行ったと答えていました。
井上九段は電王戦に出場した船江恒平五段、菅井竜也五段の師匠で、
PVでもいい人オーラ全開でしたね。
どちらを持ちたいかアンケートは羽生三冠37.3%、渡辺王将39.8%、
どちらともいえない22.9%と、ずいぶん渡辺王将が盛り返しました。
今期A級順位戦最終局が終わった時の心境という質問メールには、
イベントではトイレに行きたくなったらどうするんですかが質問されまくった、
幸い大丈夫だった、負けたら落ちるもんだと思ってやっていたので、
自分が落ちたんだろうなと思っていた、
NHKの取材でコメントくださいというときに、
残留でしたけどどうですかと言われて初めて知った、ずっと悪い将棋だった、
と答えていました。271手だったかな。三浦弘行九段との壮絶な死闘でした。
サイン本プレゼントではサウスポーの久保九段が右手で錬磨の字。
すらすら書いていたので相当練習したんじゃないですかね。
藤田女流は何故かジュゴンを書くことに。コメントの圧力でした。
凄い絵になりましたが、
私が見たジュゴンはこんな感じでしたと言って押し切っていました。
盤上は相穴熊から玉頭戦という珍しい展開になりました。
渡辺王将の角が5五の中央で大威張りし、
渡辺王将の飛車の頭に羽生三冠が歩をたたいたところで、
どちらを持ちたいかアンケートは羽生三冠48.7%、渡辺王将51.3%。
これは渡辺王将のペースになったか。
渡辺王将は飛車取りにかまわず羽生玉頭に歩を成りこみ、
角のラインが利いているうちに玉頭を歩で攻めるのが厳しいとの解説です。
おやつコーナーでは小さい袋にマカロンが入っていたので、
久保九段が悪戦苦闘の末壊していました。案外不器用なんだろうか。
その後の解説では一直線の攻め合いは後手が一手半早いとのこと。
一手でも大差という世界で一手半ですから、久保九段は相当渡辺王将持ちですね。
ところがその後千日手になる順が見つかり、観戦記者が対局場に入りました。
立会人の田丸九段は、千日手を催促していると思われるといけないので、
記者室で待機しているそうです。
しかしその後千日手を回避しても後手が優勢になる手順が発見され、
渡辺王将も背筋が伸びて座る位置が前になり、
コメントでわかりやすいと突っ込みが入りました。
その後羽生三冠に受けの手が出て渡辺王将の姿勢が前かがみに。
渡辺王将の姿勢関数は的確だなと突っ込まれていました。
どちらを持ってみたいかアンケートは羽生三冠25.1%、渡辺王将59.0%、
どちらともいえない15.9%と圧倒的に。
その後も玉頭の厚みを王様も使って押し返して粘ろうとする羽生三冠に対し、
着実に駒をはがして包囲し、羽生三冠が投了して渡辺王将が防衛となりました。
相穴熊の将棋は中盤に形勢に少しでも差が出ると、
押し戻すことがまったくできずに最後は大差になる、ということもよくあります。
今日の将棋も渡辺王将の角が5五の中央に進出してからは、
渡辺王将がずっと飛車取りも手抜きで攻めに攻めて羽生玉を丸裸にし、
最後は激辛で受けて勝つという圧勝でした。

王将戦第六局 その13【公式放送の】勝利写真撮影1です【裏側】


王将戦の謎写真の舞台裏です。
フルセットの末羽生三冠を退けた渡辺王将はどんな写真になるのでしょうか。
「勝利者はこのタイミングで、自分が何をするのかを知ります。」
の字幕が個人的につぼでした。

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