渡辺明王将に羽生善治三冠が挑戦している第63期王将戦七番勝負第1局は、
渡辺王将が羽生三冠を下し、初戦を飾りましたました。
王将戦は持ち時間8時間の2日制で、渡辺王将が9連覇した竜王戦と同じ持ち時間です。
渡辺王将は竜王戦の初日は時間をほとんど使わないで指しましたが、
本局も初日に87手進み、
88手目を羽生三冠が封じるというすごいハイペースになりました。

とはいえ掛川で王将戦ですからまずはお決まりのこちらから。

・徳川家康に扮する渡辺明王将と、山内一豊に扮する羽生善治三冠
a338
 
・揮毫する羽生さんを隠し撮り?するちっとも忍んでいない忍者
a269
 
※写真は王座戦中継ブログより

振り駒の結果渡辺王将が先手番になりました。
後手の羽生三冠が2手目に△8四歩と、矢倉でも角換わりでもどうぞという手を指し、
渡辺王将の選択で戦型は相矢倉になりました。
その後羽生三冠は去年12月の対局▲永瀬拓矢六段対△羽生善治三冠の将棋で指した、
△4四歩という手を選びましたが、この将棋は羽生三冠が負けた将棋ですので、
どこで工夫を入れてくるのかが注目されました。
この局面では△4四馬という手を去年森内名人が指し、
ニコニコ生放送で解説する羽生三冠の目の前で渡辺竜王から勝利していますが、
渡辺王将が負けた方の選択肢をあえて外したところに、
事前研究からの駆け引きが伺えます。
その後も前例となる▲永瀬拓矢六段対△羽生善治三冠の将棋をなぞり、
88手目、羽生三冠がが感想戦で敗着とした手のところで封じ手となりました。
しっかり研究手のところで封じ手にするのも芸ということでしょうか。

ニコニコ生放送では初日は解説が飯島栄治七段、聞き手が竹部さゆり女流三段でした。
竹部女流は和服姿で登場し、気合が入っている感じでしたが、
午後になると自由すぎる話や振る舞いがでて面白かったです。
竹部女流は飯島七段のひとつ上なのですが、
若かりし頃の飯島七段が、奨励会で竹部女流が畳の上で正座しているのを見かけ、
なんだかとてつもないところに来てしまったと思ったと述べたところ、
竹部女流がそれはペナルティで正座させられてただけと衝撃の暴露。
何でも早指しで負けたところ当時の奨励会幹事だった小林宏七段に怒られ、
もっと考えてもっと魂を込めて指せと正座させられてたそうです。
他にも若かりし頃の渡辺王将に5分しか使わずに指して負かされた時も正座だったそうで、
昔から自由だったんだなーと思いました。
また、高橋道雄九段門下だったらアニメの会話で盛り上がれたのにとか、
うちの師匠(伊藤果七段)は電話で詰め将棋の問題とか出すと不満を言っていました。
伊藤七段は詰め将棋作家でもあり、電話では変な中合いにひっかかって
「ひっかかったひっかかった」と喜ばれたとエピソードを語っていました。
恒例?となったテレフォンショッキング(ティロフォンショッキングというらしい)では、
副立会の真田圭一七段が出演しましたが、
こちらも正立会の田中寅彦九段がプールに行きたいからと水着を持参していたが、
バスの時間が合わずに断念したと衝撃の暴露。合ったらいいんかいな。
盤上の解説は飯島七段が孤軍奮闘といった感じでした。

二日目の羽生三冠の封じ手は△6九銀と、
前日の封じ手アンケートでも75%前後だったど本命の手が来ました。
ニコニコ生放送では解説が行方尚史八段、聞き手が安食総子女流初段でしたが、
リレー質問のどのお酒がおいしいかと言う質問に、
行方八段は勝った後の酒と答えていました。
安食女流はニコニコではどんな動画を見ているかという質問に、
ゆっくりが好きと答えていました。
ブログのタイトルの「安食総子のゆっくりしていってね♪」はそういうことだったのか。
行方八段は88手目の切った張ったの局面で封じ手になったのを、
「ここまで進んで封じ手って味悪くないですか?」と述べていました。
去年行方八段は2日制のタイトルである王位戦を羽生王位と戦っていますが、
その時はゆっくりした進行だったので、
羽生さんが合わせてくれたのかな?とも言っていました。
その時は羽生さんが感想戦に3時間もかけたり、行方八段が封じ手の際に、
封筒に名前を書かずに羽生さんに渡したらやり方を教えてもらったなど、
エピソードを語ってくれました。
三浦九段が封じ手のやり方まで事前研究して練習していたのは有名ですが、
それを聞いた時はせせら笑っていたのに自分は失敗してしまったとぼやいていました。
局面では2枚の飛車を自陣に投入して王様を守る羽生三冠に、
渡辺王将が銀のただ捨てから強襲を仕掛けます。
そして羽生三冠が自陣角で渡辺王将の王様に王手をかけますが、
歩の中合いで角を呼び込み、
解説では銀を打ってはじくと見られていた場所に金を打ちます。
ここの形勢ははなはだ難解で、検討中の真田七段の表情からもよくわかります。

・検討する真田七段。何だこれはと心の声が聞こえてきそうです。
e003

ただしこの中合いからの金打ちというのがどうも絶妙手順だったらしく、
117手目の金打ちから急転直下、135手目までで渡辺王将の勝ちとなりました。

個人的には2日制の初日に時間を使わずに指す渡辺王将に、
自分が負けた将棋をたどるという手法で対抗した羽生三冠が面白かったです。
自分が指した将棋なら実戦での読みの蓄積がありますから、
研究で負かされないようにという意図が見えます。
2008年の竜王戦で、渡辺竜王に羽生四冠が挑戦した時は、
渡辺さんの方が序中盤で離されないようにという対策の方が深刻でしょうと、
当時の深浦康市王位が述べていました。
渡辺二冠に対する信用がずいぶん上がったなあと思いますし、
なりふりかまわず勝ちにいくのであれば羽生さんはオールラウンダーですから、
振り飛車や右玉のようなタイトル戦ではあまり見られない戦形も期待できるかも、
とも思いました。

ブログランキング・にほんブログ村へブログランキングならblogram

勝負心
渡辺明著
¥788