11月2日~4日にわたって行われた第1回将棋電王トーナメントは、
ponanzaの優勝で幕を閉じました。
ponanzaの山本さんは今年の春に行われた第2回電王戦が終わった後に、
今度は大将として舞台に立ちたいと言ってましたので、
念願がかなったということになります。
特にTwitterで、
「オレ、電王戦トーナメント勝ったら結婚するんだ。」
「勝ちたい(結婚資金的な意味で」
とフラグ?をたてて心配されていましたが、見事に跳ね返しての優勝でした。
これで春の第3回電王戦に出場するソフトが決まりました。

5位 習甦 竹内章さん

今回の習甦は1次予選の最初で1勝3敗まで追い込まれ、
内容も攻めが暴発して負けるといった展開でしたので、
ちょっと電王戦出場は危ないのではないかとも思いました。
しかし持ち時間が増える決勝トーナメントでは切れ味を取り戻し、
Aperyとの第5位決定戦では解説の西尾六段が「かっこいい決め方」
と絶賛するような寄せを見せて快勝しました。
1次予選ではAperyに負けてしまいましたが、
電王戦出場をかけた5位決定トーナメント決勝戦で借りを返しました。
Aperyの開発者の平岡さんはTwitterで、
「Aperyを電王にしてやりたい。確率は低いが諦めてはいけない。」
「今日も早く来ることに関して他の参加者の誰にも負けなかった。」
と気合十分でしたが、惜しくも電王戦出場は逃してしまいました。

4位やねうら王 磯崎元洋さん、岩本慎さん

やねうら王は1次予選の初戦で負けましたがこれがいい方に働きました。
スイス式トーナメントというのは、初戦で勝ったら次も勝った人と対局、
負けたら負けた人と対局となるので、いい感じに裏街道で勝ち星を積み上げ、
最後の実力ソフトであるAperyとの対局では、
必殺のやね裏定跡が炸裂して快勝しました。
こちらに関してもAperyの開発者の平岡さんはTwitterで、
「富岡定跡みたいなのを一定のアルゴリズムで定跡から省くのって、
やね裏定跡仕込むしか無いかなという印象。
必敗形になって将棋が終わってても、
評価値自体はもう少し局面を進めないと下がっていかないので。」
と言っていて、技術者にとってインパクトのある考え方だったことがうかがえます。
開発者の磯崎さんもインタビューではしゃべりっぱなしで、
ソフトの名前、開発者の印象、実装した考え方といった面で、
非常にインパクトのある方でした。BM98の開発者は面白い人だった。

3位 YSS 山下宏さん

YSSは第2回世界コンピュータ将棋選手権から出場している古豪です。
AI将棋という名前でPS2版やWindows版のソフトも出されていたので、
こちらの名前だと知っている方も多いと思います。
第5回世界コンピュータ将棋選手権から、
Bonanzaの登場以降においても決勝トーナメント入りを逃していない、
非常に有力なソフトです。
2010年に将棋ソフトあから2010が清水市代女流王将に勝利したときに、
日本将棋連盟からアマチュア五段の認定を受けたという珍しいソフトでもあります。
1次予選ではBonanzaに敗れましたが決勝トーナメントで借りを返し、
第3回電王戦出場の切符を手に入れました。
また、3位決定戦ではやね裏定跡にはまらないように工夫をしたそうで、
やねうら王の磯崎さんがインタビューでずるいよずるいよとぼやいていました。
1次予選、決勝トーナメントと2度にわたって、
ダークホースのやねうら王を撃破し、Bonanzaも撃破した実力派の古豪、
YSSは森下卓九段と当たってほしいなあ。

2位 ツツカナ 一丸貴則さん

ツツカナは2010年の第20回世界コンピュータ将棋選手権が初登場で、
このときは21位とあまり奮いませんでした。
翌年も11位でしたが、2012年に3位に入り、
第2回電王戦で開発者の一丸さんと共に有名になったソフトです。
特にプロ棋士からの評価が高く、筋のいい将棋を指すと評判ですが、
指し手の読みの深さをプロ棋士の棋譜を元に自動調整しているとのことで、
プロ棋士から評判がいいのも納得です。
1次予選ではApery、AWAKE、Bonanza、習甦といった、
前評判の高いソフトに危なげなく勝利し、
ponanzaに敗れはしたものの優勝候補の強さを見せ付けてくれました。
決勝トーナメントもponanzaを追い詰めましたが、
敗れて準優勝になった後のインタビューで、
1位よりも2位か3位くらいのほうが気楽でいいなと思っていたのでよかった、
と言っていたので、望みどおり?の結果になりました。

1位 ponanza 山本一成さん、下山晃さん

ponanzaは2009年の世界コンピュータ将棋選手権が初出場で、
このときは31位でした。
2年後の2011年には5位になり、そこから4位、2位と着実に順位を上げ、
実力をつけています。
今回はBlunderの開発者である下山晃さんとタッグを組んで、
すさまじい強さを見せ付けての優勝でした。
1次予選は一度攻めたら止まらない猛烈な攻め将棋で他の将棋ソフトを圧倒し、
これは1枚も2枚も上の実力だなと素人の私にもわかるくらい、
インパクトのある勝ち方でした。
決勝トーナメントでは持ち時間が増え、
1次予選ほど圧倒とはいきませんでしたが、
準決勝、決勝とやや不利な状況からねじり合いでひっくり返し、
未知の局面でどのくらい最善手に近い手を指し続けることができるかという、
将棋の力という面で1番であることを証明しました。
ツツカナとの決勝戦では、
ponanza自身は▲7九金と受けられると攻めが切れてまずい、
と考えてたそうですが、その手をツツカナが逃してからは一方的になりました。
ハードの制限があるものの、春の世界コンピュータ将棋選手権よりも、
格段に強くなっているような印象を受けます。
ただふわふわした序盤にも磨きがかかっていそうで、
決勝戦でツツカナとの不思議な序盤戦も面白かったです。

個人的にはたまに映される開発者の部屋が面白かったです。
対局中にもかかわらず、
勝負しているはずの人間同士がなごやかに歓談しながら将棋を観戦していて、
とても不思議な光景でした。

K-Shogi開発者の本田啓太郎さんのブログより

今回、将棋電王トーナメントに参加して、
開発者の皆さんと会話をさせていただいたことでモチベーションが上がり、
また頑張ってみようかなという気持ちになりました。
開発時間の確保が最大の課題ですが。。。


Apery開発者の平岡拓也さんのTwitterより

ずっとコンピュータ将棋において勝てば棋譜がどんな内容でも良いと考えていたが、
一丸さんと長いこと話しながら将棋見てて、内容にもこだわりたいように思った。
最後の王手ラッシュとか、無意味な桂不成とかはコンピュータ将棋らしいし、
人に対しても失礼にはあたらないと私は考えているなど、美意識は人によるだろうけど。


やねうら王開発者の磯崎元洋さんのブログより

ツツカナとAperyとの一戦ですが終盤の寄せで驚愕の現象が起こりました。
ツツカナが大長考に入ったのです。
AWAKEの再来かとざわめきが起きるなか、ツツカナの作者は、
「fail-high*1したときは、さらに思考を続けるようにしてあるんですけど…」と、
一応意図的なものであることを強調。
「しかしさすがに考えすぎでしょ。時間残ってないですよ。」
「仮にfail-highしたときに思考続けるって言っても限度ってものがあるでしょ。
普通、5倍ぐらいの時間使ったら打ち切るでしょ。」
など否定的な開発者もいるなか、この長考によりツツカナが勝ちまで読みきり、
大盤面には9999の評価値が。
ツツカナが高らかに自分の読み切り勝ちを宣言したのです。これには観戦者全員驚愕。


ツツカナかっこよすぎです。。。
まだ将棋電王トーナメントが終わったばかりですが、
今後開発者さんが吐かれるであろう感想や裏話も面白そうですね。

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