ひふみん→やしもん リレー質問


加藤九段のリレー質問を屋敷九段が解説する動画です。
矢倉の定跡の出だしの5手目を▲6六歩にするか▲7七銀にするかというのは、
矢倉党にとっては覚えなければいけない必須項目でもあります。
本田女流が羽生さんの本について触れていますが、
変わりゆく現代将棋」という本のことだと思います。
これは将棋世界という雑誌に羽生さんが連載していたもので、
三年半にわたって連載されたものを本としてまとめたものです。
連載時期は1997年から2000年にかけてでちょっと古いものなのですが、
1996年に七冠制覇した羽生さんが勝つことの次に見つけた目標として、
一切の妥協無く知識や思想を注ぎ込んだ連載です。
そのため難解な連載でもあります。

梅田望夫著「シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代」より渡辺竜王の話

内容的にはかなりの高レベルです。
連再開始は97年ですので、私は12、3歳の奨励会初段前後です。
当時、読んでいたとしても、理解できなかったと思います。
ほとんどの人にはわからないことを承知で、
羽生さんがこれを41回も続けるというのは、自分がここに書き留めておきたい、
自分しかいない、という強い意欲を感じます。


例えば将棋の駒の動きを知っている、遊びで指したことがあるといった、
将棋人口を500万人くらいと仮定すると、プロが150人くらいですから、
奨励会初段ですと上位500人かそれ以上ということになります。
将棋人口の1パーセントで5万人ですから、
将棋の上位0.01パーセントで500人、それでもわからないという連載を、
七冠を失った羽生さんは始めました。
しかも谷川九段(当時竜王)の挑戦を受けている名人戦の真っ最中でした。
タイトルを総なめにした後に知っている知識をぶちまけるというのは、
なかなか過激な思想ですね。
勝負師としては不利になるはずですが、
勝つことから探求することにシフトチェンジした羽生さんらしいです。
この連載では▲7七銀の場合は5筋交換の急戦と矢倉中飛車、
▲6六歩の場合は陽動振り飛車と右四間飛車に警戒を必要とする、
と結ばれています。
ところが2008年の竜王戦では、渡辺竜王が羽生挑戦者相手に、
▲6六歩に対して5筋交換の急戦を仕掛け、タイトルを防衛しています。
特に第7局の勝った方が初代永世竜王、 羽生さんが勝つと永世七冠、
渡辺さんが勝つと将棋界史上初の3連敗4連勝という大一番で用いたことは、
俺はそうは思わないぞ!という意思を真っ向からぶつけていて面白いですね。
現在森内名人の挑戦を受けている渡辺竜王ですが、
第1局でさっそく▲6六歩に対して5筋交換の急戦を仕掛けています。
結果は渡辺竜王の負けでしたが、渡辺竜王も森内名人も矢倉は好きなので、
今後も矢倉になる対局が出ると思います。
矢倉の5手目とそれに対する後手の対策に注目です。意地を張るなら急戦ですね。

ブログランキング・にほんブログ村へブログランキングならblogram

変わりゆく現代将棋 上
羽生善治著
¥1,890






変わりゆく現代将棋 下
羽生善治著
¥1,890