今日行われた第61期王座戦五番勝負第5局は、103手で羽生善治王座が勝利し、
中村太地六段の挑戦を退けて王座を防衛しました。
今日は最終局ということで振り駒で先後を決め、羽生王座の先手になりました。
ここで先手を引くのが王者の運の強さでしょうか。
戦型は中村六段の注文で横歩取りになり、
後手となった中村六段が早めに形を決めて先手からの急戦に備える定跡を選びました。
そこで羽生王座が持久戦にするために、
一手損をするかわりにその後の発展性を期待できるという工夫を見せて、
序盤から時間を使う展開になりました。
その後羽生王座が押さえ込みに行く手を指して中村六段の反発を誘います。
反発した勢いに乗って羽生王座の飛車を押さえ込みに行く中村六段と、
それをかいくぐって攻撃を繋ぐ羽生王座という展開になり、
攻め合いとは違った攻めが繋がるか凌げるかで勝負が決まるという、
中盤ながら緊張した局面になりました。
中村六段の指し手は堂々、強気一辺倒で、
加藤一二三九段が著書で羽生さんや谷川浩司九段を「柔」、
森内俊之名人や佐藤康光九段を「剛」と表現していましたが、
中村六段は「剛」なんだなと思わせてくれました。
ニコニコ生放送では解説が屋敷伸之九段、聞き手が本田小百合女流三段でしたが、
中盤の難所で指し手の解説が冴え渡り、忍者屋敷健在を示してくれました。
途中中村六段が角で銀を取るか、角をかわすかという選択肢があり、
角をかわしたのですが、この後数手で羽生王座に形勢が傾き、
最後は羽生王座の、勝ちを確信した時に手が震える癖も出て、
羽生王座の勝利となりました。
今日の観戦記は憲法学者の木村草太さんで、中村六段との対談記事もあります。
将棋ファンっぷりあふれるブログ木村草太の力戦憲法
個人的には形勢が羽生王座に傾いてから、
羽生王座が頻繁に席を外していたのを観て、ずいぶん慎重なんだなあと思いました。

加藤一二三九段著「将棋名人血風録 奇人・変人・超人」より

升田さん自身が著書で述べているけれど、
プロというのは形勢がよくなった瞬間にミスをすることが多い。
升田さんがいうには、そういうとき大山さんはまず、「形を整える」。
つまり、襟元を正したり、トイレに行くといって席をはずしたり、お茶を飲んだり、
庭に目をやったりする。
対して、「うまい話があるとすぐ飛びつく傾向がある」と自分を評する升田さんの場合は、
相手がミスをしたと思った瞬間、すぐに次の手を指してしまう。
「それでかえって悪手を指すことがけっこうあるのだ」―升田さんは語っていた。
升田さんが浪花節をうなるのは、
「すぐに指したい」という気持ちを抑えるためでもあったらしい。
升田さんが大山さんに戦績という点で一歩譲ったのは、
このあたりが影響していたのではないだろうか。


今日の羽生さんはずいぶん形を整えました。
この点だけでも、今回のタイトル戦がどれだけ厳しいものだったか、
中村六段がどれだけ強かったのかが伺えると思います。
どんな観戦記になるのか楽しみです。

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