第54期王位戦七番勝負第1局、羽生善治王位対行方尚史八段の対局は、
83手で羽生王位の勝ちとなりました。

行方八段はタイトル初挑戦。
新人賞や勝率一位、棋戦優勝2回など活躍されていましたが、
羽生世代より少し下の世代はどうしても羽生世代の層の厚さに阻まれることが多く、
勝率のわりになかなかタイトル戦の舞台まで上がることができません。
しかし行方八段は去年ご結婚されてから絶好調で、
順位戦A級昇級に王位挑戦と勢いに乗っています。
しかし行方八段を良く知る方は、
とりあえず昨日今日と遅刻しなかったことにほっとしたかもしれません。
行方八段が初めて順位戦でA級に入ったとき、
作家の故団鬼六さんが祝い舟を出そうということで、
将棋の関係者を集めて60人ほどでさくら船を出したそうです。
ところがこのとき主役の行方八段は1時間以上の大遅刻。
八段になったからにはそろそろ身を固めることを考えることも必要ではないか
と近代将棋に書いていた団鬼六さんさんですが、
ご結婚されてからの活躍を喜んでいることでしょう。
とはいえ行方八段はプロ入り直後の竜王戦で羽生さんとの挑戦者決定戦まで進んだ時、
「羽生さんに勝っていい女を抱きたい」
と言ったことが一番有名かもしれません。
今の将棋界は羽生世代が優等生揃いなので、行方八段のようなタイプは貴重ですね。

振り駒の結果羽生王位が先手になり、角換わりの定跡手順をなぞりつつ1日目が終了しました。
近年の2日制のタイトル戦は初日から戦いになることが増えましたが、
この対局は駒がぶつかることなく、42手目に行方八段が封じ手をしました。
確かに角換わりの将棋は後戻りできない局面になることが多く、
ちょっとした形の違いで勝ち負けが変わるので、
どんな局面で相手に手を渡すのかを慎重に選ばなければいけません。
ですが渡辺竜王と丸山九段のタイトル戦は角換わりの戦型で序盤からさくさく進んだので、
羽生王位と行方八段の間にどんな駆け引きがあったのでしょうか。
私にはさっぱりわかりませんが、
とりあえず行方八段が後手番で経験のある局面に持っていくことに成功した、
とは言えそうです。
2日目は相居飛車の将棋らしく、あちこちで歩がぶつかり始めました。
ぶつけられた歩を取ったり、取らずに別の場所の歩をぶつけたりして局面が複雑化する中、
行方八段が一直線に切り込む手を選びました。
これに対して羽生王位も40分ほど考えてから切りあう手を選択。
どちらが読み勝っているのかという勝負になりましたが、
羽生王位の攻めが早く、行方八段の投了となりました。

第2局は7月23、24日に行方八段の先手で行われます。
先手番になる行方八段がどのような作戦で巻き返しを図るのか注目です。

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