【第2回電王戦】船江恒平xツツカナの局後の記者会見の様子【将棋】


ツツカナの開発者一丸貴則さんは、ツツカナが勝利した直後に
勝った気がしない、釈然としない、とおっしゃっていました。
私はこれを聞いて、一丸さんは根っからのプログラマなのかなと思いました。
ツツカナはとにかくハード面で強化していくというコンピュータソフトとは違い、
少ないリソースを有効的に使うためにどの指し手を深く読むかということを考え、
読んでも無駄な指し手をどう切り捨てるかということに主眼があります。
ハード面のスペックにものを言わせてとにかく広く深く読むという、
他の将棋ソフトとは対極の存在です。
ところが、この対局では船江五段に逆転を許してしまい、
勝因は疲れを知らない、あきらめずに粘るというハード面での特性でした。
このことがソフト屋の一丸さんに勝った気がしないと言わせたのかなと思いました。

第2局、第3局ともにコンピュータは飛車先の歩を切らせました。
飛車先の歩交換三つの得ありという格言があり、
・歩が駒台に乗る(二歩の制限はあるものの自由に使える)
・飛車の利きが敵陣に直通する(相手が守らないといけないので、守り駒の動きを制限できる)
・歩がいなくなる(銀や桂馬を前に展開しやすくなる)
ということが言われています。
ところが、第2局、第3局ともにこの得は生きたのかというと疑問が残ります。
例えば2番目の得は矢倉に組んでしまえば制限になっていませんし、
組む前に攻めるのは飛車先の歩を交換するために使った3手のせいで間に合いません。
3番目の得も第2局、第3局ともに相手の攻撃に備えて銀を中央に使ったため、
歩がいてもいなくても変わりません。
1番目の得がどのくらいなのかは私ではわかりませんが、
この得とされるものを具体的な形、
例えば駒得とか飛車先を破るといったことに変えられないのであれば、
デメリットの面が強く出てしまうのではないかと思います。
デメリットは
・3手遅れる
・相手が先攻する権利を得る
というものがあります。
第2局ではPonanzaに手の遅れを突かれて模様を張らせて劣勢になり、
第3局ではツツカナに先攻を許しています。
プロ棋士の間では無条件で飛車先の歩を切らせることはありませんが、
そのせいで得を生かす指し方が忘れ去られてしまったのか、
そもそも得ではないのかは私にはわかりません。
しかし、そこに持ち時間の制限もあるということを考えると、
先攻されることによる持ち時間の消費というデメリットもありますから、
勝負の理ということで考えればそこまで得は無いのかもしれません。
将棋の理ということで考えると得だとは思うんですけどね。

梅田望夫著
どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語」より

現代将棋は、ちょっと進みすぎてしまって、もうおおらかに序盤を指せなくなってしまった。
序盤の最新研究を知らないというだけで、
土俵の外まで一気にもっていかれてしまう恐れがある。
その恐れを少しでも少なくするために、研究しなければならない。
そういうところで引けを取っては、
経験や大局観を活かす局面に至らず敗れてしまう可能性もあるからです。


現代将棋はとにかく序盤の研究が重要だという棋士の見解ですが、
現代の申し子でありそうなコンピュータが違うことをしているのが印象的でした。
第2局でのPonanzaの、飛車先を切らせたことによる3手の相対的な手得、
王様を7七に置いたまま8八に入城する手を省いたことによる手得を活かして、
模様を張ってポイントをあげようという指し方、
第3局でのツツカナの、やはり手得を活かして先攻してポイントをあげようという指し方が、
将棋の序盤にはもっと可能性があるんだよ、もっと自由なんだよと語っているようで、
面白かったです。

ブログランキング・にほんブログ村へブログランキングならblogram