第2回電王戦の第3局、船江恒平五段対ツツカナの対局は、
ツツカナの勝利で終わりました。

第3局は開始前から1万人を超え、
対局開始時には4万人を超える大盛況となりました。
船江恒平五段は和服で登場し、
ツツカナの開発者の一丸貴則さんはかなりシャイな方なので、
駒を並べるところから奨励会の方に換わっていました。

ツツカナの一丸さんが用意した作戦は4手目に△7六歩でした。
プロ相手に定跡型は避けたほうがいいというのがコンピュータ側の認識なのでしょうか。
それに対して船江五段はさほど時間を使わずに対応し、
通常の相居飛車のような形になりました。

最序盤は船江五段が飛車先の歩を交換し、少しポイントを上げました。
コンピュータは飛車先の歩を交換されたという損に対して、
別方向の得を目指すことになりましたが、ツツカナの回答は先攻でした。
飛車先の歩の交換は歩をぶつけるのに3手かかるので、
その分陣形が立ち遅れているでしょうという主張です。

中継の安食総子女流が登場すると完全にあじあじワールドで、ほんわか味がいいですね。

昼食休憩直前にツツカナが猛然と突っ込んでいきましたが、
あれをやると昼食休憩中に人間側が対処を考えられるので、
プロ棋士同士だとやらない仕掛けですね。

昼食休憩後、やはりツツカナの主張には無理があり、船江五段が優位を拡大していきました。

途中ツツカナの58手目△6一飛の時に、
先手は▲5三馬と駒得を図って優位を拡大していく指し方と、
▲同馬と飛車を取って切り合いに行く選択肢があったのですが、
船江五段は切り合いに行く▲同馬を選びました。
持ち時間が2時間ほど残っていたので、
時間が残っている状態での切り合いはプロ棋士とコンピュータでどうか、
という初の展開になりました。

ここで加藤一二三九段が登場しました。
加藤九段は73歳ながらいつも通りのマシンガントークで、
ひふみんワールド全開でした。
切り合いに行った局面をぱっと見で難しいのではないかと言っていましたが、
結果的にはこれが正解で、神武以来の天才の実力を見せてくれました。

その後中継で窪田義行六段が登場。
窪田六段は将棋にとどまらずすべてが窪田ワールドな方なので、
ゆったり優雅な駒を動かすしぐさ、微動だにしないマイクの持ち方、
言葉の選び方すべてよかったです。
29年前に、今のコンピュータ将棋協会の会長である瀧澤武信さんに招かれて、
コンピュータと将棋を指したことがあり、弟がいっぱいできたようだと喜んでいました。
※窪田ワールド全開なブログ義七郎武藏國日記
あじあじワールドとの相性も意外によかったように思います。
今日はワールドデーですね。

その後伊藤真吾四段が中継に登場し、
寒い冬にはうどんもいいけど、私はあなたのそばがいい、
と言って満足してました。
豊島?強いよね。でおなじみ佐藤紳哉六段の系譜を継ぐのは伊藤四段?

将棋はその後ツツカナが切り合いでの強さを見せて逆転し、
一時はボンクラーズの評価値がツツカナに900点以上つけるほどでしたが、
ここから船江五段が再逆転して力を見せます。
解説の鈴木八段はコンピュータの終盤をかなり信用していたらしく、
銀のだた捨てを指したツツカナに、
これはすごい手だ、すごく筋のいい手だ、弟子にしたいくらい、勢いで投了したいくらい、
と褒めていましたがその直後に逆転し、
「これハッタリ機能は無いんですよね」
「正直あきらめかかってたんで、これは船江君に後で見て欲しくないなあ」
とぼやいていました。
しかしコンピュータ相手に終盤でひっくり返せるものなんですね。

その後自身の頓死筋に気がついたツツカナが粘りに行き、
終盤から中盤に戻るような将棋になりました。
ただしこうなるとコンピュータは疲れもありませんし、
短い時間で手を読むことには長けています。
船江五段の持ち時間が少なくなってしまっていたこともあってツツカナが再逆転し、
最後は船江五段の猛攻をしのいで勝ちとなりました。
入玉将棋でもないのに184手に及ぶ大熱戦でした。

人間とコンピュータのねじりあいで、二転三転した名局だったと思います。
コンピュータというと特に攻撃の手が強いというイメージがありますが、
74手目▲5五香と王手をかける手は解説の鈴木八段が
「本局一番の名手かもしれない」
と言っていましたし、船江五段も対局後に見えていない手だったと述べていました。
しかし、この対局では受けにもいい手がでました。
124手目の△2三金打と守った手は、鈴木八段が
「楽観が吹っ飛んだ手」
と言うほどいい手で、直前の123手目▲2五桂打を、対局後に船江五段が
「ひどい手だった」
と感想で述べていました。
直前の局面では船江五段が大優勢で、
絶対にあきらめないというコンピュータの特性がよく出たと思います。

私はへっぽこですがプログラマだった時期もあるので、
鈴木八段が自身を高めるツールになれればいいとおっしゃったのが嬉しかったです。
なんだかコンピュータが敵役みたいな宣伝のされ方のように思っていましたが、
スパーリング相手として、また、
プロの将棋を観戦するときに指し手を測る物差しのひとつとして、
コンピュータと付き合ってもらえればいいなあと思いました。
虎の威を借る狐のような使い方をされると困っちゃいますけどね。

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こんなに多いのかー。

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △7四歩 ▲5八金右 △8四歩
▲7八金 △3二金 ▲2五歩 △6二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △8五歩 ▲2八飛 △2三歩 ▲2二角成 △同 銀
▲8八銀 △4二玉 ▲7七銀 △7三銀 ▲6六歩 △6四銀
▲6七金右 △3三銀 ▲4八銀 △3一玉 ▲5六歩 △7五歩
▲6五歩 △同 銀 ▲7五歩 △7六歩 ▲6八銀 △8六歩
▲同 歩 △4四角 ▲5五角 △同 角 ▲同 歩 △6六角
▲同 金 △同 銀 ▲2六飛 △7五銀 ▲5四歩 △5二金
▲5三歩成 △同 金 ▲2四歩 △同 歩 ▲7一角 △5二飛
▲6一角 △5一飛 ▲6二角成 △6一飛 ▲同 馬 △2二玉
▲5四歩 △同 金 ▲2三歩 △同 玉 ▲5一飛 △4四角
▲4六飛 △2二金打 ▲5四飛成 △9九角成 ▲2五歩 △同 歩
▲4三馬 △5五香 ▲5六歩 △8九馬 ▲8八金打 △7八馬
▲同 金 △6六桂 ▲6七銀 △5八歩 ▲同 銀 △7八桂成
▲2四歩 △同 玉 ▲5五龍 △4三金 ▲同 飛成 △6八金
▲4九玉 △2七角 ▲3八角 △6六銀 ▲同 龍 △4二歩
▲6八龍 △4三歩 ▲7八龍 △5四角成 ▲2八香 △1四歩
▲5五金 △5三馬 ▲7六龍 △1三玉 ▲7二龍 △7一歩
▲7七龍 △8九飛 ▲6九歩 △8六飛成 ▲6八龍 △5四歩
▲4五金 △7三桂 ▲1六歩 △1二玉 ▲1七桂 △2六歩
▲1五歩 △同 歩 ▲2五桂打 △2三金打 ▲3六金 △4四歩
▲4六金引 △2四銀 ▲2六香 △3二金 ▲7四歩 △8五桂
▲7三歩成 △6四歩 ▲7四と △7七桂成 ▲5七龍 △4二馬
▲5五歩 △3五歩 ▲5四歩 △5六歩 ▲同 金 △3六歩
▲同 歩 △2七歩 ▲2九歩 △1六歩


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