第2回将棋電王戦第1局 ponanza vs 佐藤慎一四段 局後記者会見


Ponanzaの開発者である山本さんは、
Ponanzaに中飛車にさせるために三手目▲5六歩を指示したと言ってますが、
現実にはそうはなりませんでした。
ここで当然
「何で定跡を暗記させて途中までそれを指させなかったのか」
という疑問が湧くと思います。
これについては以前の記事の動画で「定跡についての深い理解がないから」と述べていますが、
もう少し掘り下げてみたいと思います。
定跡の理解といいますと、指し手の手順を暗記すると思われがちですが、
指し手の意味を理解するということです。
指し手の意味といいますと、
例えばこの対局では、開始早々真ん中の歩を突くということは飛車を真ん中に置いてね、
という意味なのですが、Ponanzaはそう受け取ってくれませんでした。
初戦ですと、阿部四段が端歩を2つ伸ばすことに成功しましたが、
これにより終盤戦で入玉を含みに守ることができ、優位に進めることができました。
端歩を伸ばす手は序盤ですが具体的な得となって効果が現れるのは終盤なので、
習甦にはそれがわかりませんでした。
それでは何故丸暗記じゃだめなのかといいますと、
定跡の進化のスピードが早すぎるからということがあります。
現在ではプロ棋士同士で研究会を行っていて、新しい手が次々に出ては消えていきます。
例えばどこかの局面で必ず先手が優勢になる、という新手が研究会で出たとしましょう。
するとそれが公式戦で出るには、後手の人がその結論を知らないという条件と、
当然ですがその局面に先手が誘導できたという条件が必要になります。
そしてその条件を満たさないまま時間がすぎると、
研究の結論だけがプロ棋士同士に流れ、やがて公式戦では出なくなります。
Ponanzaは結論を知らないけれど佐藤四段は結論を知っている、
そんな戦型が多数あるはずだと判断した山本さんが、
誘導されることを防ぐために定跡手順を避けたのだと思います。
それともうひとつ、情報収集という理由もあるでしょう。
Ponanzaはソフト相手ですと序中盤にリードをとることができますが、
指し手の意味を理解しているプロ棋士相手だとどうなるか、
ソフト相手と同じようにリードが奪えるのか、それとも不利になるのか、
という事を知りたかったというのもあると思います。
その意味ではPonanzaの3手目と5手目のちぐはぐな手に対して、
佐藤四段が機敏に態度を決めるように迫り、
11手目で居飛車と態度を決めたPonanzaに対して、
ちぐはぐな手を指した事による陣形の立ち遅れをついてポイントを稼いだ、
という展開は、やはりプロ棋士相手だと序盤はだめだという情報がとれたと思います。
ただしその後の、
ポイントを稼いだから無理せずじっくりいこうかという人間心理を突いて、
巧みにリードを奪い返すところはPonanzaの序盤センスが出ました。
この辺はプロ棋士同士ではまずないような、
最序盤でポイントを稼いだ後にどう指すのがいいか、
という局面になってしまったことが佐藤四段にとっては不運でした。
経験の無い局面でしかも自分がいい、しかし始まったばかりで先がまだまだ長いという場合に、
安全にという方針でいくのは人間的には仕方ないところだったと思います。
また、中盤で挽回しましたが持ち時間の消費が多くなってしまいました。
持ち時間が残り1時間を切ったところでは、
盤上の真理としては佐藤四段が優勢だったと思いますが、
コンピュータ相手に終盤の持ち時間を残せなかったと言う点を考えると、
勝負の真理としてはコンピュータが優勢だったのかもしれません。
将棋は野球やサッカーなどとは違い、点数を重ねるゲームではありません。
初回の猛攻で10点取ったとか、前半が終わって5-0だとかですともう試合が終わりですが、
将棋は最後に王様を取られたら負けというゲームです。
そのため終盤に間違うと一気に負けになってしまいますから、
終盤になると時間が短くても間違わないコンピュータは強敵だと思います。
プロ棋士が初めてコンピュータに負けることになりましたが、
人間は間違うものですし、終盤で間違うと負けというのが将棋というゲームです。
実力が上でも負けることはありますし、気落ちする必要はないでしょう。
羽生さんでも勝率7割ですから。



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