渡辺明二冠(当時は竜王)による将棋の楽しみ方の本です。



他の将棋の本のように、
棋理を追求したり、何かビジネスに役立つ本だったりではありません。
将棋のルールを知っているくらいの方に、どう楽しめばいいのかを書いた本です。
最後に付録でルールが書いてありますので、ルールを知らない方でも大丈夫。
とはいえ取り上げる将棋の題材がタイトル戦のものなので、
超一流のシェフが松坂牛のステーキをつつきながら、
味わい方を教えてくれるようなグルメな本です。

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目次
第一章 頭脳だけでは勝てない
偶然の少ないゲーム /集中力のメリハリ/ヤマを張る/気合で行くか、冷静になるか/
封じ手の駆け引き/直観の精度/ミスと切り替え/駆け引きは対局の前から/
二大戦形/出来を左右する対局の重要度/普段のトレーニング/調子の良し悪し/
将棋は何歳がピークか/小学生からプロを目指す/学業と将棋の両立/趣味と息子

第二章 プロとは何か
奨励会制度/私の奨励会時代/将棋にコーチはいない/プロはどうやって稼ぐか/
新しいニーズ/名人戦と棋士のランク/レッスンプロの待遇/段位と実力の関係/
トップと新人の実力差は/女流棋士の強さ/女流新団体/アマとプロの差/
強くなる手段に困らない時代/アマからプロになった男/ブロガー渡辺/
コンピューターの進化/ボナンザ戦を受けた理由/いよいよボナンザ戦/
コンピューターはどこまで強くなるか

第三章 将棋というゲーム
スポーツを観るように将棋も/序盤は作戦を練る/バランスは相手を見て/
互角でも好みはある/実利を求める中盤/方針を徹底する/勝負を決める終盤/
実戦を見よう!/駒のやりとりでポイントを稼ぐ/損得だけでなく「効率」も見る/
スピードが問われる/定跡と研究/一手の違いで全く新しい世界が/
現代将棋と過去の大棋士/トップ棋士たち/同世代のライバルたち/
追撃する最若手と踏ん張るベテラン

第四章 激闘! 
防衛戦の前に/開幕二連敗/「開戦は歩の突き捨てから」/存在しない局面が見える!/
流れを変えた角打ち/佐藤康光再び/突然の不調/超急戦/全く予想外/盲点/
自分を信用すること

付録1 ルール解説 
付録2 さらに将棋を楽しむために
付録3 詰め将棋(山田康平氏提供)
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第一章や第二章は、将棋界や将棋のかけひきについて書いてあります。
 例えば奨励会のこと、順位戦のこと、どこからお金が出ているのかといったことは、
将棋ファンなら知っていることかもしれません。
しかし、局面や手番によって集中力の深度にめりはりをつける、
負けの局面だったけど「勝ちました」という態度で指したら相手が間違えて勝ったなど、
人対人の勝負のあやというものも書いてあります。

第三章と第四章では、実際に将棋の図面を描いて、
形勢判断の仕方や、指しているときの心境が書かれています。
特に、秒読みに追われながら、残り10秒でも良い手が発見できず、
残り数秒である手が頭をよぎって、
正しいかどうかもわからずに指した角のタダ捨ての手は、
後に歴史的妙手と評価されることになります。

将棋を見ていて何が楽しいか、
私は究極の個人種目だから楽しいと思っています。
プロのテニスでも、ダブルスよりシングルスの方がよく見られていますし、
動画の再生回数も多いはずです。
ところがテニスとは違い、将棋はコーチがいません。
野球もサッカーもコーチがいますが、
頭脳スポーツである将棋は頭に体が追いつかないといったことがなく、
定年もないのでコーチがいないのです。
また、持っている戦力も一緒です。
例えばサッカーの日本代表の監督と、ブラジル代表の監督では、
ブラジルの方がはるかに戦力が上でしょう。
テニスでいえばフェデラーのサーブと私のサーブじゃ雲泥の差です。
しかし将棋では、渡辺竜王の飛車も私の飛車も同じように縦横に動く駒です。
そのため将棋は勝つも負けるも本人次第であり、
そんな職業についた棋士を潔いと思います。

ところが将棋の盤上では違う世界が広がっています。
作戦を決めて陣形を整備する、攻撃的にいくか守備的にいくか、
先攻するのかカウンターでいくのか、中央からいくのか端からいくのか、
といった駆け引きは団体競技のものです。
そのうえ作戦の種類も豊富な上に、
どこかの駒が1マスずれると途端に状況が変わります。
例えば横歩取りの将棋で、
後手の飛車が△8四飛の場合ですと守備的な布陣ですが、
△8五飛と1マスずれると途端に攻撃的な布陣になります。

この本では、個対個、組織対組織それぞれの将棋の楽しみ方が書いてあります。
ところが、本書には書いてない楽しみ方があります。
本書は2007年に書かれたもので仕方ないのですが、
今はニコニコ生放送などでタイトル戦の観戦ができます。
ニコニコでコメントするもよし、見るもよし、あるいは2chなどでもよし、
他の人たちと大勢でタイトル戦を肴に、
現役プロの解説を聞きながら縁台将棋の野次馬ができるのです。

贅沢な時代になりましたねえ。



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